広瀬 勉
#photograph #photographer #concrete block wall
おかあさんは わらっていますが
なあに空虚です
あるとき
血が下からたいへんにでましたが
それはあなたがたです
死んでいくのは だってあなたがた
おかあさんはね
この世界にはずっといませんでしたよ
せんたくものも
昨晩のおかずも ずっとそのままです
おかあさんは
戦争のある世界にはいないので
(やっぱりね)
ちっともひとの「死」でふとっていません
もう横じゃあない
時代は縦
縦抱き抱っこでなくちゃ満足できないんだ
コの字型授乳クッションも使い方が変わったよ
横に寝たカッコでミルクを飲むのはもうおしまい
クッション床に置いて
開いている側が足
頭をフカフカもたれかけて
お手手は左右にバランスよく置いて
深々コの字に納まったこかずとん
えっと、ただ納まってるだけじゃないよ
首は縦
お腹は縦
重力に逆らって縦
2つの目はまん丸で
ぼくが手にする哺乳瓶の揺れを追って
縦
重力に逆らう
哺乳瓶の先端を含ませた途端
頬っぺむぎゅむぎゅ夢中で動かした
視線は縦
「あー、飲んでる飲んでる。まるで社長さんの椅子に座ってるみたいね」
横からミヤミヤが言うけれど
ふんぞり返ってはいない
背は縦
シュッと伸びて
この姿は雇われじゃない、創業社長だな
何を創業したかわからないけど
重力に逆らって
生後4ヵ月後の未来を見据えている
縦、縦
時代はもう横じゃあない
窓辺に
小鳥が来る
いつか
山鳩が来たこともあった
息をころして
見ている
餌を
啄んでいる
下の道を
隣家の
猫が通る音がする
黒猫は
首に鈴をつけている
・・・
** この詩は、
2024年8月23日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第8回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。
#poetry #no poetry,no life