墓参から帰った

 

さとう三千魚

 
 

昨日の
夜の

新幹線の
最終のひとつ前のひかりで帰ってきた

鮭のおにぎりと
バターピーナッツと

ビールを飲んで帰ってきた

志郎康さんの墓参だった
ユアンドアイの会の皆さんとの墓参だった

“ユアンドアイ”は

志郎康さんが名付けてくれた
“あなたとわたし”

墓石には「遊極私」と志郎康さんの書が彫られていた

私を極めて遊ぶと読むのか
極私は私の先にあるのか
極私は私の先の私を超えたところにあるのか

墓参から帰った

今朝は
女の従姉妹の

いくえちゃんにわたしが作ったカレーを届けた

いくえちゃんは
10月から台湾に住むのだという

カレーを届け
海を見に行ってきた

海には白子漁の船がたくさん浮かんでいた

九月の晴れた空に
あなたとわたしいた

夏の雲がたっていた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ブドウひとつメールひとつ

 

一条美由紀

 
 


落ちていく
螺旋を描いて誰も追いつけない深淵へ
流れていく
身体をうねらせて
生命の源に
溶けてゆく

 


不安は忍び寄る
囁く声は優しいのに
目の奥に淡く光る真実はなんの味かわからない
安心して暮らせる世界はないと神は言う

喘ぐ彼女の願いは傲慢と欲にまみれ
振り返る彼の目的は溶けて流れてしまった

小さな幸せがあれば満足だと思った時を
思い出せなくなってる

 


上目遣いでニャーとなく子猫のように
素直なわがまま娘に戻れたらいいな
青空にボールを追って遊び疲れてしまう
赤ん坊のような男の子に変われたらいいな