由比の海を見た

 

さとう三千魚

 
 

おとといかな

こだまに
乗る

東に上るときは
いつも

こだまだった

こだまは
全部の駅に停まる

駅を発つ
そのとき

景色は
ゆっくり流れる

由比の海を見る
トンネルの切れ目で一瞬

海を
見る

おとといは
灰色の海を見た

空の色を映していた
聖蹟桜ヶ丘の駅に向かっていた

中学の頃か
新川さん*の編んだ本を持っていた

「愛の詩集」

だったか

数年前
施設から

葉書をもらったことがあった

  あなたの名前は

  両面を焙って手で割きながら酒の肴にしたら
  美味しいだろうな

  腰を痛めて
  ここでは月を見ていない

  緑は私の一番好きな色です

そんなことが
書かれていた

空に白い月が浮かんでいた

 

* 新川さんは、詩人の新川和江さんのことです.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life