機序

 

工藤冬里

 
 

機序の見えるグラサンで裏返ったカブトエビを見る久し振りの白人映画
今から止めなければ真珠は買えない
求めて見つけるか偶然に見つけるかは関係ない
緑蒼いキャベツの海の町は破壊されました
夫はとうに亡くなりましたいい人でした
いくらか自由に暮らせましたがシオンとは機序であり地球上にはない
高所作業にヘルメットが必要なので希望を与えましたが何をしてしまったかではなく今何をしているかです
bouleとか主体の詩を止めなければならない時がやって参りました

 

 

 

#poetry #rock musician

いない、猫 **

 

さとう三千魚

 
 

猫がいる

いない
猫がいる

三毛猫の鼻のあたまの黒い
いない猫が

いる

子どもをたくさん産んだ
子どもたちはもらわれていった

冬の初めにいなくなり
隣家の納屋の藁の中に見つかった

いない
猫がいる

河口にいる
たくさんいる

河口に
いない猫と子猫と鴉がいる

 

・・・

 

** この詩は、
2025年7月25日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第19回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩に加筆した詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

世界の果てと崖

 

辻 和人

 
 

こかずとんは知ることとなった
世界には果てというものがあることを

ずりずり
ずり
ハイ
回る
まだ体を腕で持ち上げられてない
腕ずりずり
足ずりずり
ハイハイまでいかないけど
オムツ入れの箱を壁に見立てての不断のトレーニングが実を結び
コミヤミヤもこかずとんも
ずりハイずりハイずりハイ回り
お昼寝マットを横断横断
広い、広いなあ
今までこんなに広いトコに寝てたのか
泣き声あげてかずとんパパが抱き上げてくれるまで
ずっと天井だけ見て寝てたのか
頭ぐっと持ち上げれば
見よ
眼下には白いふかふかが広がってる

やる気十分のコミヤミヤ
生まれたてのイモムシみたいに元気いっぱい
ずりハイずりハイずりハイ回る
ふかふかにめり込みつつ手足動かせば
おおっ、体が前に進んでく
今まで体と言えば
ぺたっとマットに張りついてるようなもんだった
体が体じゃないみたい
ふっくら顔にっこにこイモムシのコミヤミヤ
ずりずり
ずり
ハイ

ここで悲劇が勃発
コミヤミヤに刺激されたこかずとん
負けじとずりハイずりハイずりハイ回って
白いふかふかかき分けて
進んで進んで進んだ先
突如落っこちた!
たかーい崖から
あらあら、こかずとん
お昼寝マットの外へはみ出てしまったんだ
お昼寝マットの厚さは4センチに満たない
それでもこかずとんにとっては
たかーい崖と同じ
どうやったって這い上がれない
ッギュイエーン、ギュヨェーン
大変大変、すぐ抱き起して
よしよし

広い広いと思っていた世界には
たかーいたかーい崖があった
そこが世界の果てだったー
腕の中で
ようやく涙が収まったこかずとんは
そんな風に感じているだろうね
でもね、こかずとん
お昼寝マットの外にも
世界は果てしなく広がってるんだよ
いつかはわかっても
今は絶対わからない真実
こかずとんが噛みしめている崖の高さを
抱っこしながらかずとんパパも
一緒に噛みしめてあげるよ