あなたを見ました

 

原田淳子

 
 

 

書を焚く煙
燃える東の空の下に
あなたを見ました

あの子が塗った緑色
崩れ落ちた壁のなかに
あなたを見ました

オレンジが沈む河の底に

片足の猫が寄り添う隣に

並べられた白い布のひとつに

花柄のコーヒーカップの脇に

錆びた井戸の底に

引き裂かれたオリーブの枝に

向けられた銃の先に

あなたが愛したその土地から
あなたが去ってゆくのを見ました

 

*「あなたを見ました」韓龍雲への返詩として

 

 

 

動静 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 106     toshio さんへ

さとう三千魚

 
 

野に
ゆけば

会えるのか

野の
きみに

会えるのか

待っている
ここに

いる

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った106個めの即詩です。

タイトル ” 動静 ”
好きな花 ” 野の花 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

fantasizing a clean conscience

 

工藤冬里

 
 

過渡的であることに甘えきってぶら下がっているわけだがそれには二種類ある
前に寄せるか後ろに寄せるかのどちらかだ
それは曖昧なので共闘のふりができるがそれだけに厄介である
いつか追われ地下に隠れることになる
幼児期から迫害者の顔をして
原因も結果もない娑婆の中で
期限切れの缶詰を開け続ける
靴底から結果は上って来る
その時間を知ることはできない

 

 

 

#poetry #rock musician

長崎 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 105     shornem さんへ

さとう三千魚

 
 

くずれた
教会の

天使の

首の

飛ぶのを
見た

おんなの
からだのような

爆弾の
黒く光るのを

見た

のうぜんかずら
の花の

紅い
紅い

青空に
咲いていた

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った105個めの即詩です。

タイトル ” 長崎 ”
好きな花 ” 凌霄花(のうぜんかずら) ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

まいご ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 104     chie さんへ

さとう三千魚

 
 

夏の初めか

坂の
多い街を

ぐるぐる
歩いたことがあった

汽笛が聴こえた
教会の鐘の音が聴こえた

風が吹いていた

街は
海を

抱いていた

夏の空に
二十六聖人たちが浮かんでいた

ピンクの針を集めて
眠ろう

すべての葉を閉じて

ゆつくり
眠ろう

 
 

***memo.

2024年10月4日(金)、
自宅にて、作った104個めの即詩です。

2024年9月16日に大阪でご依頼いただきました。

タイトル ” まいご ”
好きな花 ” ネムノキ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

2024 9月 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 103     reiko さんへ

さとう三千魚

 
 

夏は終わった

大風は
遠く

すぎて
いった

朝顔
咲いている

まだ
咲いている

九月の
空に

むらさきの
花が咲いている

 
 

***memo.

2024年9月15日(日)、
松山 “Utaco Drip”にて、「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第28回で作った103個めの即詩です。

タイトル ” 2024 9月 ”
好きな花 ” 朝顔 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life