夜中に
目が覚めた
起こさないようにベットから
そっと起きた
女は
俯せに寝ていた
本の部屋で
窓をあけたら
西の山の上に月がいた
チェット・ベイカーの最晩年の歌を聴いた
almost blue
若い頃の美しい顔と声は
しわがれて
いた
歯も抜け落ちていただろう
工藤冬里は昨日
詩に
“歌は自然に二部に分かれ その厚みの中で” *
“テカる瓢箪” *
と書いていた
晩年になれば
誰も
二部に分かれその厚みの中でテカるだろう
ふたつに引き裂かれている
ふたつに引き裂かれている
誰もが
晩年には
テカる
almost blue は1982年に
エルヴィス・コステロがチェット・ベイカーに捧げた歌だ
* 工藤冬里 詩「私はἐγὼ [egō]」より引用