千曲へ

 

さとう三千魚

 
 

雪の降る前に
行った

去年
だった

千曲の戸倉で茸鍋をつつき福寿草の温泉に入った

春になったら
また来ます

そう約束した

それで
この春に千曲に向かった

高速を走った
275kmをクルマで走った

眠くなり
何度か休んだ

八ヶ岳と諏訪湖のPAで休んだ
姨捨のスマートICで高速を降りた

根石さんを乗せ *
田沢温泉に向かった

やっと
ここに

ひとりの詩人がいた

富士屋の風呂に入った
夕食にビールを頼んだ

そこにいた

翌朝
根石さんは言った *

“吉本は喉の奥にひっかかった骨みたいだ” **
“吉本はひとりで荷なっているものがある” **

そう言った
そこにいた

 
 

 * 根石さんとは、詩人の根石吉久のこと
 ** 吉本とは、詩人、評論家の吉本隆明のこと

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

お湯 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 125     neishi さんへ

さとう三千魚

 
 

姨捨スマートICで下りた

去年の秋は
更埴ICだった

いま
お湯から出た

根石さんはまだ浸かっている

根石さんには
“根石吉久の暮らしの手帳”というエッセイ集がある

“人形のつめ”という詩集もある

詩は
根石さんは

もう
いいのかな

長湯している
根石さんはオオイヌノフグリが好きだという

オオイヌノフグリの花は
春に咲く

小さくて
青い

どこにでも咲いている

根石さんがお湯から出たら
宿の夕食になる

ビールを頼んである

アサヒ
スーパードライだと宿の主人は言った

 
 

***memo.

2025年5月12日(月)、
長野、田沢温泉 富士屋にて

“無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 125個めの即詩です。

タイトル ” お湯 ”
好きな花 ” オオイヌノフグリ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

身延へ

 

さとう三千魚

 
 

身延へ行きたいと女がいった


クルマで

身延へ
向かった

義母がいたころ
身延へ

行ったことがあった

義母と
モコと

行ったことがあった

身延には
俤が

残っている
だろう

身延へ行きたいと

女は
いった

久遠寺の長い階段を登り賽銭を投げた
急な坂道を降りてきた

そこにいた

坂道に
シャクナゲの花が咲いていた

ピンクの花だった

そこに
いた

それから温泉に入った

昨日
夕方

市原さんと
Tさんと

駅前の広場に佇った

湯船で
そのことを思った

母と娘と
インドの人たちから

戦禍のパレスチナへ喜捨をいただいた

分厚い男たちの黒い手を
握った

そこにいた
そこにいた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

縁側にて **

 

さとう三千魚

 
 

ひとと
ひとが

いる
縁側にいる

台所で
鈴の音がきこえる

ひとが
いる

息をしている
白い髭が伸びている

いのちを
分けている

 

・・・

 

** この詩は、
2025年4月25日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第16回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

がらん屋のエーコさんが好きな花だと言ったから ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 124     hirose さんへ

さとう三千魚

 
 

風なんだ
という

アネモネの青く
咲いていた

この世に
灰色の猫がいる

ふたり
いる

眼が
青い

六十年が過ぎた
風が吹いていた

ブロック塀の下にいる
咲いている

 
 

***memo.

2025年4月21日(月)、
高円寺の仮宿

jkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkhyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyk

kkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkkk
kkkkkkkmu

ooooooooooooooooooooooooo
999999999999999
999999999999999999にて

灰色の猫の”路地”さんとともに書いた”無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 124個めの即詩です。

タイトル ” がらん屋のエーコさんが好きな花だと言ったから ”
好きな花 ” アネモネ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

“from a summer to another summer” を聴いてる

 

さとう三千魚

 
 

昨日
女は

仕事を休んで
ランチに誘ってくれた

死んだモコの詩で
地方都市の賞を貰ったから

お祝いなんだろう


遅く起きて

立体駐車場にクルマを停めた
デパートで赤福とメロンパンを買った

それから
ホテルのレストランに

入った
バイキングというのか

料理を皿に載せて
テーブルに

持ち帰る

客はほとんどが
女のひとたちだった

野菜サラダを山盛りにして食べた

アイスも食べた
珈琲も飲んだ

ガザの人たちが
支援食料に群がる光景を思い浮かべながら

食べた
満腹になった

午後
帰った

ベッドに横になった

夕方に起きて河口まで走った
風が強く吹いていた

詩を書かなかった

それで
いま

工藤冬里の
“from a summer to another summer” を聴いてる *

“それにしてもほんとの夢は” *
“それにしてもほんとの夢は” *

そう繰り返し
工藤は歌を終わる

かつてわたしの夏はあった
いまわたしたちは別の夏を生きる

夏はわたしのものでもあなたのものでもない

 
 

* “from a summer to another summer”は工藤冬里のワンマン「2004.5.5 裏窓」 の7番目の曲です.
https://torikudo.bandcamp.com/track/from-a-summer-to-another-summer-4

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

アザレアの花束は偽りのバラか ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 123     harutaka さんへ

さとう三千魚

 
 

花びら
やわらかい

清らかな
白い

捨てることができなかった

うすいピンクの
花びらの

憎悪は
愛は

流れていた

ロミオは毒を飲んだ
ジュリエットは短剣を刺した

憎悪と
愛とは

血の色をしている
薔薇が咲いている

突堤の

先で
男は

喇叭を吹いている

 
 

***memo.

2025年4月7日(月)、
静岡市「サンビエントカフェ(旧みろくさんぶ)」での”向井千惠ソロ”の後で”無一物野郎の詩、乃至 無詩!” 第36回を行為する予定でしたが、翌日の夜に自宅で書いた123個めの即詩です。

タイトル ” アザレアの花束は偽りのバラか ”
好きな花 ” バラ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life;

猫 いない **

 

さとう三千魚

 
 

今夜はいない

きっと
むこうの

奥の
布団の

上で
眠っている

眼をつむるといる
だまってこちらを見ている

 

・・・

 

** この詩は、
2025年3月28日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第15回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

モコ、金色のお守り ※

 

さとう三千魚

 
 

この正月は
家にいたよ

去年の正月は
きみを見ていた

布団の上で

きみは荒い息をしていた

金色の毛に包まれた
きみは

胸が

上下に
揺れていた

この正月は家にいたよ

用宗の海で
初日の出を見た

浅間さんで祈り
三嶋大社で

きみのお守りを買ったよ

いないきみの
金色のお守りを買ったよ

きみはいまどこにいるの

そこにいて
待っていて

 

・・・

 

※ この詩は、
2025年1月10日に書いた詩です。

浜松「私の詩」コンクールの締め切りの日でした。

モコが逝って一年が過ぎて、書けた詩でした。
3月20日に授賞式がありましたがこの詩で賞をいただいたのです。

大人になってから初めての投稿でした。

モコの詩で賞をもらえて嬉しいです。
モコが笑っているように思えます。

女が泣いてくれました。

2025年3月24日.
三千魚

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

猫と **

 

さとう三千魚

 
 

重ねた
座布団に

飛びのっていた

高いところから
見下ろしていた

そして
消えた

いつか

猫は
納屋の稲わらの中にいた

いまは
縁側で

乾いた掌をひらいてる

 

・・・

 

** この詩は、
2025年3月15日 土曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「猫と詩のつどい」で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

そして、今朝、
猫さんに、過去からこちらに少し歩いてきてもらいました。
2025年3月18日.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life