ひとに会いにいく

 

さとう三千魚

 
 

昨日は

伊豆稲取の詩野さん* に
会いに

いってきた

片道134kmをクルマで走った

沼津から
天城峠を越えて

うねうねの山道を走った

詩野さんは稲取の丘の上のガソリンスタンドを改装している
無骨な棟梁さんが壁をぶち抜いて窓を作ったのだという

そこから
海が見えた

“bookend “という人が集える場所を作ろうとしている

ひとは何故つどうのか
ひとは何故生きるのか

ひとは何故死ぬのか

詩野さんの笑顔をみた
少女のようだった

しあわせなんだなと思えた
わたしも

いつか
いなくなるが

会えてよかった

 

* 詩野さんは、小鹿社の社長、詩野さんのことです.
 

 

 

#poetry #no poetry,no life

温泉にはいる

 

さとう三千魚

 
 

クルマで
きた

275km
クルマできた

かつて更埴市といった
千曲にやってきた

根石さんと
蕎麦を食べた

きのこ鍋でビールを飲んだ

福寿の温泉にはいる

二本の脚を伸ばす
首まで湯に浸かる

詩は”結果”なのかなあ

湯舟で
根石さん*はいう

“仮定”でしょ
“結果”だとしたら

酷すぎる
湯舟でわたしいう

根石さんの問いには”仮定”があり”過程”がある

深夜に
根石さんとコンビニまで歩く

根石さんはおむすびを買う
わたしは赤いリンゴを買う

 

* 根石さんは、詩人の根石吉久さんのことです.
 

 

 

#poetry #no poetry,no life

猫と人と **

 

さとう三千魚

 
 

本屋に
猫がいる

猫は
テーブルの下を歩いてきた

白と黒の毛の
猫の

瞳が大きい
集まった人たちはここで詩を書いた

“方代”と
“顕信”と

“星の王子”を連れてきてくれた

 

・・・

 

** この詩は、
2024年11月1日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第10回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

由比の海を見た

 

さとう三千魚

 
 

おとといかな

こだまに
乗る

東に上るときは
いつも

こだまだった

こだまは
全部の駅に停まる

駅を発つ
そのとき

景色は
ゆっくり流れる

由比の海を見る
トンネルの切れ目で一瞬

海を
見る

おとといは
灰色の海を見た

空の色を映していた
聖蹟桜ヶ丘の駅に向かっていた

中学の頃か
新川さん*の編んだ本を持っていた

「愛の詩集」

だったか

数年前
施設から

葉書をもらったことがあった

  あなたの名前は

  両面を焙って手で割きながら酒の肴にしたら
  美味しいだろうな

  腰を痛めて
  ここでは月を見ていない

  緑は私の一番好きな色です

そんなことが
書かれていた

空に白い月が浮かんでいた

 

* 新川さんは、詩人の新川和江さんのことです.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

群青になる

 

さとう三千魚

 
 

夕方に
行った

今日も
行った

マリーナ横の

夕方の
海の

ゆらゆら

揺れてる
見てた

ゆらゆら
ゆらゆら

揺れている

すべての青い波は揺れている
すべての青い波が揺れている

夫婦の釣り人ふたりは昨日もいた
ふたりは並んで釣っていた

釣り糸を垂れ
撒き餌を撒き

黒鯛を
狙って

いる
揺れてる

浮のまわりの
ボラたちの

腰を振っている
平たい唇で餌を吸っている

青い波の

暮れて
群青になる

ゆらゆらの波の群青になる
ゆらゆらの海の群青になる

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

海から帰った

 

さとう三千魚

 
 

昨日も
行ってた

昨日も
海に行ってた

知り合いのおじさんが
マリーナ横で

竿を出していた
黒鯛をねらっていた

陽に焼けた
白髪の

おじさんはいた
ずいぶんと会ってなかったな

おじさんは
おとなしく話す

おじさんは
オレンジの軽トラに乗っている

膀胱と前立腺を手術でとったんだと言った
海浜公園の土手の坂はもう登れないから

ここで竿を出している
と言った

今日も

海に
行ってみた

おじさんはいた
おじさんに会えた

マリーナ横の海は

空を映して
青く

うねうね揺れていた

風に吹かれていた
夕方に帰ってきた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

わたしに足りないもの ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 108     yumiko さんへ

さとう三千魚

 
 

はじめての
花は

クリーム色の

バラの
花だよ

おおきな
バラだったよ

あれから会ってない

けれど
いつも

いっしょだよ
クリーム色のバラの花だよ

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った108個めの即詩です。

タイトル ” わたしに足りないもの ”
好きな花 ” クリーム色の大輪のバラ ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

なにもかも ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 107     syun さんへ

さとう三千魚

 
 

歩いていると

バラに
出会う

近所のヒトが

庭に
植えている

いろんな
バラが

いる

なにもかも
好き

になる

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った107個めの即詩です。

タイトル ” なにもかも ”
好きな花 ” 近所のバラ園のバラ全部(いろいろな色) ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

動静 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 106     toshio さんへ

さとう三千魚

 
 

野に
ゆけば

会えるのか

野の
きみに

会えるのか

待っている
ここに

いる

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った106個めの即詩です。

タイトル ” 動静 ”
好きな花 ” 野の花 ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

長崎 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 105     shornem さんへ

さとう三千魚

 
 

くずれた
教会の

天使の

首の

飛ぶのを
見た

おんなの
からだのような

爆弾の
黒く光るのを

見た

のうぜんかずら
の花の

紅い
紅い

青空に
咲いていた

 
 

***memo.

2024年10月5日(土)、
京都 徳正寺 門前での”無一物野郎の詩、乃至 無詩!”第29回で作った105個めの即詩です。

タイトル ” 長崎 ”
好きな花 ” 凌霄花(のうぜんかずら) ”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life