淡水

 

工藤冬里

 
 

釣り人は
幾重にも打ち寄せる小波の端で
公魚か
鱒様の豹柄のものを
魚籠に蓄えているのだった
島は島ではなく
堆積物のたまさかの隆起で
あゝそれは
海だったものの残骸であった
花崗岩の風化物としての
ただの淡水の

 

 

 

#poetry #rock musician

暗中來的終是來了,

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

暗中來的終是來了,
比如冬夜,疲憊
或者無端的自在。
黑暗裏看群山溫婉
聽拍岸唱誦黃州。
我當然想再一次在京都之巒
縱火痛哭出一個"妙"字!
叫你看老虎退步⋯⋯
萬仞之上一地淚珠;
叫你看六十年我還是經歷太少,
無辜的夜色自暴自棄成為寨城。
我當然想看
周庭把季節遷植到新的穹蒼;
叫你在放風之餘
暢想用手割酒割肉!噫!嗚呼
可你看,我們難為了警察
作供時把六月當作隆冬,昂尻。
六個月囚坐才約莫出暴政只能是春天,哦嗬⋯⋯
綠意盎然繁花勃起⋯⋯
我不幸的肝膽已無酒,只流血
可你看看足下:
香港腳是我們的腳。

 
2023年12月5日晨
一時大意作於寨城

 

 
 

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あわてる人

 

野上麻衣

 
 

これまであつめたものをはなれて
うつって
よって
くらす人ができて、
かわること。

山のみえる、
ちょっとたかいところの家で
いまからくらす。

あたらしいところへ歩いていくから
たくさんのものをおいていく。
靴はじょうぶなものだけ、
もちものはリュックに入るだけ、
手はあたためておいて。

おいてきたら
おいてきすぎて
好きなものまでおいてきて、
あわててとりにかえる。

はしってさ
ころんでさ

まにあって、よかった。

 

 

 

ステーキの後の角煮や赤ワイン煮込みのシチュー

 

駿河昌樹

 
 

物語に触れたくないときが
けっこう
いっぱいある

ステーキを食べたあとで
角煮とか
赤ワイン煮込みのシチューとか
出されるような気分

小説であれ
映画であれ
ドラマであれ
小さなお話であれ
なにか
ストーリーのあるものに
もう今は
絡みとられたくない
入り込みたくない
そんな気分

じつは
三十年ほど前から
はげしく
はげしく
そんな気分になっていて
だれかの人生にまつわるお話も
「今日こんなことがあったんだよ」的な
ちょっとしたお話も
ステーキのあとの
角煮や
赤ワイン煮込みのシチュー

それでいて
物語の最たるものである
歴史なら
どんなものでも
スポンジが水を吸うように
いくらでも
ごくごく飲み干さんばかりの
奇妙な気分

どうやら
ひとが創作したものに
拒否反応が
ひどくなっているらしい
ひとのアタマが考え出そうとした
構造とか
統一とか
効果とか
そんなものはどれも
ステーキのあとの
角煮や
赤ワイン煮込みのシチュー

 

 

 

色変えぬ松に夢見し 行く道々

 

一条美由紀

 
 


喰らえば喰らうほど腹が減り、
憎めば憎むほどに恨みは募った。
やがて彼の肉体は歪み、
薄黒い異形と成り変わった。

 


その村の墓には墓ごとに草刈り鎌が刺さっていた。
死人が生き返ってこないようにとの風習だった。
ムササビが飛び交う村の中央にある大きな沼には鯉が放たれ、
初夏には蓮の花、秋には鯉祭りに村は華やいだ。
田に放たれた鯉の幼魚に早朝餌を与えるのが子供の仕事だ。

ある時、
幼い子供とおばあさんがその沼で溺れ、子供が亡くなった。
以降蓮の花は咲かなくなった。

鯉祭りは行われなくなり、村の過疎化は進んだ。
お墓の草刈り鎌は抜き取られ、今は普通の墓地と変わらない。
村の人々が大事に守ってきた神さまのいる山は、誰かに売却された。

私は故郷を離れ、その村に帰ることもごくまれになった。
美しい里山の人々の営みや祭りを楽しむその声だけが私の心に残る

 


やまびこは答えた。
だが、言葉はバラバラと散らばっていった。
追いかける記憶は少し凍えていたが
優しく佇んでいた。
それでいいのだとわかった気がした。

 

 

 

天然無窮

 

長谷川哲士

 
 

思索は全て脳の泡もう考えるな
汁の流れに身を任せ
心臓と肋骨の隙間こじ開け
外を恐々覗き見してはほくそ笑み
極北の群青見る事願いながら
震えてそこに在る事だけが
人間に許された唯一の享楽

ぶるぶるぶるぶる震える音楽
泡は弾けて空へ溶けてゆく
もう考える必要も無い
深々と血液の真紅が
黒々と成りゆきて漆黒の夜
踊って睡る泣いて融けて
存在に謝れ

土に頭擦り付けて
土の中にまで潜り込んで
呼吸を忘れてやっと
謝った事にしてもらえるかは不明瞭
分からないから賭けてみる

からりと骰子を振った
後からずっと
静かな静かなここにいる
たまに周りで血の繋がった
他人が来ては泣いている
風は口笛吹いている