進化

 

辻 和人

 
 

順調に育ってますって2人とも
久しぶりに病院訪ねて受けた1カ月目健診
黒縁メガネふうわり揺れる先生の笑顔にほっとして
診察室を後にする
丁度ミルクの時間だ
家に帰る前にお腹空いちゃうから授乳室をお借りして、と
え、パパだめですって
ママしか入れませんって
そんなぁ
ここ都内では有名な大きな病院で
先生もスタッフも設備もすばらしい
育児の指導もいっぱいしてくれて感謝してるのに
先に空腹訴えるこかずとん抱えて授乳室に入るミヤミヤ見送って
ミルクの順番待つ羽目になったコミヤミヤを抱っこし直す
なんでパパだめなの?
ああ、ママたちがおっぱい出してるトコ見られたくないって
見ませんってば
だったら鍵つきパーテーションで仕切ればいい
世の中パパの子育てが推進されてるってのに
ママを助けることでもあるのに
だいたい子育ては男女の夫婦だけがするもんじゃない
ママだけ、パパだけのこともあるし
同性のカップルもするよ
体の性をまたいじゃった人もするよ
性の志向がはっきりしない人もするよ
するよ、するよ
子育ては
したい人がするんだよ

もちょっと言えばさ
トイレだってどんな性の人でも入れるようにすればいいんだよ
温泉も誰でも入れるようにすればいいんだよ
おっぱい丸出しでも誰もふんとも思わない
チンチン丸出しでも誰もへぇとも思わない
そんな社会になればいい
ったって難しいだろうなあ
人類がよっぽど進化しなきゃだな

おや、コミヤミヤ
待ちくたびれて眠くなってきちゃったみたいだ
おくるみの中で小さな目をしぱしぱさせながら
首をひねって家とは違う空気を嗅いでいる
そうだ、この空気の先だよ
コミヤミヤが自分の足でトコトコ歩けるようになる頃には
パパたちが授乳室にスタスタ入れるくらいに
人類は進化してるだろう
でもってコミヤミヤが自分でお金稼ぐようになる頃には
おっぱい丸出しの人とチンチン丸出しの人が
「ああ、いい湯ですね」「ほんとですね」なんて
のんびり会話を交わすくらい
人類は進化してる
わきゃないか
あ、ミヤミヤ戻ってきた
お腹が満たされて目ぱっちりのこかずとん受け取って
指しゃぶる仕草を始めたコミヤミヤを渡す
さ、ミルクいっぱい飲んで
いっぱい進化しようね
行ってらっしゃい

 

 

 

A VERY PERSONAL FEELING

 

狩野雅之

 
 


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Description

 
Even as there is sunrise, twilight will soon come as a matter of course.

The same thing is happening to everyone, even me, who is long past the peak of life.

I feel like a child rushing home towards dusk.

Tired of playing, muddy and hungry, trying to get home as a haven.

Isn’t that what it means to live and eventually die?

Of course, this is a very personal feeling.

 

Masayuki Kano
 

 

 

真夏の夢のような

 

佐々木 眞

 
 

其の一 むらぎも

ある日、この国ではじめての国民投票が行われ、
その結果、日本国憲法第9条が、全面的に改定された。

もうその頃には、護憲派とかリベラル派の市民は、ただのひとりもいなくなっていたので、改定案は、思いがけない大差で承認されたのである。

ところが、そのビッグニュースを聞いたこの国の民草は、なぜか、彼ら自身にも意外なほどの大きな衝撃を受け、心臓にポカリと穴が開いたような喪失感から、長く立ち直ることができなかった。

あの日彼らは、みずからの手で、みずからの「村肝」を殺してしまったのである。

 

其の二 長夜

毎年夏のおわりには、本邦最大級の当地の花火大会に行くことにしている

打ち上げ花火、仕掛け花火、水中花火
上から見るか、下から見るか、真ん中から見るか?
時々休んでカキ氷を食べるか?

ストーン、ストーン、ストトントン
ズドーン、ズドーン、ズドドンドン

花火を打つのは、誰のため
かあちゃんのためなら、エンヤコーラ
とうちゃんのためなら、エンヤコーラ

ストーン、ストーン、ストトントン
ズドーン、ズドーン、ズドドンドン

いろいろ手の込んだいろんな花火が打ち上げられるが
けっきょく「4尺煙火玉」1発ドンが一番いい
そう再確認するために、ここに来ているようなものだ

ところが、ことしは勝手が違った
花火師の花火の代わりに、自衛隊員が、ミサイルを撃ち上げているのだ
それも「敵基地を叩く」と鳴り物入りの、最新型の極超高速ミサイルだ

ズドン、ズダーン、ウンポコペン

まず1発目は、日本海を越えて北朝鮮沖に!

ズドン、ズダーン、ウンポコペン
ズドン、ズダーン、ウンポコペン

2発目は、津軽海峡を越えてロシアが占有する北方領土へ!

ズドン、ズダーン、ウンポコペン
ズドン、ズダーン、ウンポコペン
ズドン、ズダーン、ウンポコペン

そして3発目は、なんと台湾海峡を越えて、中国軍基地の傍らに!

ミサイル撃つのは、誰のため
御国のためなら、エンヤコーラ
陛下のためなら、エンヤコーラ

くわばら、くわばら、花火大会も変わったものだ
日本の夏も、物凄いキンチョウの夏に変わったものだ
おらっち、ひどく疲れて、帰りの列車に乗ったのよ

 

其の三 ヤになっちまう

第1次世界大戦は、4年余り続いた
第2次世界大戦は、6年間続いた
ベトナム戦争は、20年近くも続いた

そこへいくと、ウクライナ戦争はまだ半年だが、いっこうに、終わりそうにもない
もしかすると、まだ休戦中の朝鮮戦争みたいに、半永久的に戦い続けるのではなかろうか?

でも、幸か不幸か、人間という動物は、ある日突然、すべてがヤになっちまう
ヤなことを、無理して続けていると
お勉強だって、お仕事だって、はじめはメラメラ燃え盛っていたあんたの恋だって
傍から誰がなんといおうと、すべてがヤになっちまう

戦さだって、同じこと
狂った専制君主から、「出て来る敵はみなみな殺せ!」と命じられ
武装した兵士のみならず、無辜の女子供まで虐殺していたら
いくら戦意旺盛な軍人でも、ある日突然、なあんもかんも、ヤになっちまうだろう

ウラジーミルも、ワロージャも
のぶいっちゃんも、ひとはるちゃんも
イデノトシコも、おらっちも
戦争がヤで、ヤで、死ぬよりヤになれば
戦争は、やっとこさっとこ、世界中から、消えて無くなる

かな?

 

 

 

光の中で

 

さとう三千魚

 
 

大風は
過ぎていった

窓の外の緑が揺れている

きみは
いつか

“光だね”といった

電話で
いった

志郎康さんも
“光で生きのびた。” *

そう
書いてる

“生きのびることが、” *
“生きのびることが、” *

と二度
繰り返している

そこには闇があったのだと思います

いまも
闇はある

闇のなかで乳房を探している

 
 

* 鈴木志郎康「赤ちゃん」より引用しました。

 「赤ちゃん」
https://beachwind-lib.net/?p=21235

 

 

 

#poetry #no poetry,no life