二見ヶ浦霊園
山本哲也先生十三回忌まえに

 

道 ケージ

 

「和」なんですが
多いですもんねと石屋
百合地区蘭地区すみれ地区

いくら探してもないお墓
月曜日は管理事務所の定休日
記憶は確かなのに
ない

墓じまいしたとかねと友人
もうすぐ13回忌やもん
あー、早めにね
そうね、あるかも

「和」をひたすら探す
「和」が多すぎる
海は広い

オレなら
生か無か
道はいやだ
謝、元、思、「し」
いっそ狂
無と謝はあったな

なぜ「和」なのか
生前聞いた気がする
すっかり忘れて

オジキの墓も同じ霊園に
こちらも見つからない
やっとこ石屋さんに聞けて
あやめ区とわかっていたので
すぐに教えてくれた
オジキとちょっと話す
石は風の声

オヤジは
飯盛山の西部霊園
「海」
これはたぶん一つだけで
見つけやすい
しかしなぜ「海」かはわからない

オヤジは元から
話さない
石もあまり話さない
潮騒は聞こえない

 

 

 

盲人

 

廿楽順治

 
 

「夜がくる
するとだれも動けなくなる」

ひとりで
その本を読んでいると
道の前に入り込んでくる盲人がいる

泥のついた眼で
(やがてそれは開くのだが)

本の男はなにも知らない

なぜ眼なのか
なぜその先が他人の風景なのか

「見える人たちが
見えないようになるために」

ぬるぬるするものが
足のうらへ

くっついてくるのだ

 

 

 

千曲へ

 

さとう三千魚

 
 

雪の降る前に
行った

去年
だった

千曲の戸倉で茸鍋をつつき福寿草の温泉に入った

春になったら
また来ます

そう約束した

それで
この春に千曲に向かった

高速を走った
275kmをクルマで走った

眠くなり
何度か休んだ

八ヶ岳と諏訪湖のPAで休んだ
姨捨のスマートICで高速を降りた

根石さんを乗せ *
田沢温泉に向かった

やっと
ここに

ひとりの詩人がいた

富士屋の風呂に入った
夕食にビールを頼んだ

そこにいた

翌朝
根石さんは言った *

“吉本は喉の奥にひっかかった骨みたいだ” **
“吉本はひとりで荷なっているものがある” **

そう言った
そこにいた

 
 

 * 根石さんとは、詩人の根石吉久のこと
 ** 吉本とは、詩人、評論家の吉本隆明のこと

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

be vigilant with a view to prayers

 

工藤冬里

 
 

気を悪くしないでくれ
泣くな
刺さったけど泣くな
全部のせを注文し
防空壕で甘いワインを飲め
戦国自衛隊⁉︎解放されたいからケーキあげる
川の石積みも重くない
天秤棒を背負う荷役
工夫を凝らして
soundnessとは憎しみの的となること
黒鉛の直方体
ミシミシと頸椎の孵化せぬ蛍の
いのりたちを視野に入れて警戒する
ὑψώσῃ hypsōsē he may exalt
下に向かう

 

 

 

#poetry #rock musician