Claudio Parentela
鳥渡から
帰った
もう2週間になる
帰って
なにもしなかった
鳥渡には
10日ほどいた
この10年ほどの
身のまわりの写真を壁に虫ピンでとめた
説明できるものや
説明できないものや
説明したくないものや
壁に
虫ピンで
とめた
鳥渡では
一度
詩人に会った
その人は詩人だとは言わなかった
死者の眼を持つことができたなら
とも
言わなかった
その人と
なにを話したのだったか
詩人だった
笑ってた
わたしも
笑った
鳥渡から帰って
毎朝
小川の傍を
歩いていた
たまにスマホで道ばたの草花を撮ってた
その人には
この世は
どう見えるんだろう
その人は笑ってた
その人は笑ってた
※鳥渡は、高円寺のバー「鳥渡」のこと
#poetry #no poetry,no life
ちょっと
と読むらしい
鳥のようによろよろとひとは
「そこ」を
渡らない
空や川はいつまでも
「そこ」なのだろうか
きみはかんがえるふりをして
(六十年間)
奇妙な味の酒をのんでいる
死んで
生きよ
「そんなことあるわけはない
ちゃんと帰ってこい」
そういう妻も
きみも
(つまりわたしのことだ)
もう どこをも高く渡らずに
ほんのすこしだけ
夜の椅子で
たがいに羽のようなものを動かしている
※高円寺のバー「鳥渡」で