ワンピース

 

塔島ひろみ

 
 

おばあさんは魔法の杖で どんどんどこまでも歩いていく
枯木をまたぎ 塀をのぼり 川を泳いで
魔法の杖はおばあさんを引っぱっていく
目の見えないおばあさん
どこへ行くのかわからない
ここがどこだかわからない
口をぎゅうと結んで 魔法の杖を握りしめ
おばあさんは
好きな人のところへ行くのである
おばあさんは
大好きな人のところへ行くのである
道なんか知らない
でもおばあさんは
好きな人のところへ向っていた
しわくちゃの顔で 曲がった足で
白髪頭で 歯のない口で
魔法の杖を カサカサの手で握りしめ
小鳥のように
タンポポのように
歩いていくのだ

 

 

 

竜爪へ

 
 

さとう三千魚

 

雨が
降ってた

カミナリが
鳴り

雨が降っていた

さっきだ
いまは

青空に
西の山が群青に浮かんでいる

幻影だろう

戦争も
空爆も

核施設攻撃も

金髪も
大統領も

幻影だろう

人々を殺す命令をした
たくさんの人たちが死んだ

白い歯で笑った
幻影だろう

数日前に
Kさんと

竜爪に登った

文殊岳と
薬師岳と

ふたつは繋がっていて
ふたつの山が

竜爪山だという
竜が爪を落としていったのだという

薬師岳の頂で
Kさんと

鮭のおにぎりを食べた
女がふたつ握ってくれた

幻影だろう

薬師岳の頂上から
南アルプスの白い稜線が見えた

青空に白く稜線が光っていた
凪いだ駿河湾が平らにひろがり半島が女のように横たわっていた

山を降りて
Kさんは登山口の沢で顔を洗ってた

夏の下山では裸になり長尾川で水を浴びるのだとKさんは言った

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

give the devil his due

 

工藤冬里

 
 

1967年にセシウム133が91億9263万1770回震えると一秒、と決まった。ということはそれ以前に一秒はなかったのだ。一秒がなかったのなら時間もなかったのだろう。かろうじて空にふたつ光体はあった。だがそれは時間とは関係ない。最近は動きを時間と勘違いする奴が多くて困る。俺に規則性などない。ただSaulPaul的な慾望との突発的な戦闘があるだけだ。負けても勝ってもpositiveに倫理はない。B系やセミナー系のポジティブ信仰が廃れるのもそのためだ。セシウム137じゃあるまいし核もないのに海の荒野に対して宣告してみたり、一秒に合意しているのに印欧語族を反米に仕立て上げたり。死ぬことにポジティブ。なかった時間の満期だ。払うよ。

 

 

 

#poetry #rock musician

あそぶということ † † †

 
 

さとう三千魚

 

みなさんとあえて
よかったです


しろくませんせいとよばれて
うれしかったです



みなさんが

おやつをたべたり

あそぶのをみていて
しあわせになりました

おとなになると
みんなわすれてしまうのですが

あそぶことのなかには
とてもたいせつなことがあるとおもいます


たいせつをひとつだけみつけて
ずっとずっともちつづけることができたら

みなさんは
とてもしあわせになれるとおもいます

 
 
 

2021年3月30日_子どもたちへ

 

 

 

#poetry #no poetry,no life