パラレルワールド

 

田辺 弓

 

 

雨上がりの土手の道

足もとに光る草むら

泣きつかれたこどもみたいな

一日のおわり

しずくは数珠のように連なって

緑のなかでゆれる

逆さまの世界は

 

パラレルワールド

わたしたち、どこにいる

 

運動場にね、白線を引いたでしょう

あの線の 向こうとこっち側

わたしには超えられない

新しいスニーカーのかかとで

踏みにじったらたやすく消える

あの線の 向こうとこっち側

雨が降ったり

風で巻き上げられたり

小さな足あとを残す笑い声に

晒されるだけでさえ

消えて

消えてしまう

 

そうしたら

入り口も出口も

どこにあるのか分からなくなって

ひとは

道を塞がれた蟻みたいに

戸惑い、

困惑して、

ウロつき回り、

訳もわからぬまま、

それでも闇雲に、

とつとつとやたらな方角に進むのみ

 

あの線の向こうとこっち側

わたしとあなたを分けている

あの線の

 

それでも

入り口と出口を

探して

首を振ったり

ターンしたり

うつむいたり

四つん這いになったりしながら

途方に暮れて

空を見上げる

 

夕暮れどき

波のような雲

空の果て

 

雲が

やさしい身ぶりで

ゆれる

あの線をまたいだ

向こうとこっち側

あの線の

向こう へ

いける気がして

 

 

 

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