ラジオ体操

 

塔島ひろみ

 
 

ラジオ体操が聞こえてくるよ
お弁当作りながら 朝6時30分のAMラジオ
大根切る手を休め
煮干だしを弱火にして
私はラジオ体操の人となる
ラジオ体操 ラジオ体操
腕を折り 息を吐き
カエルのように飛び上がる
ラジオ体操

奥戸運動場のどっかから ラジオ体操が聞こえるよ
ラジオ体操の歌が聞こえるよ
ラジオ体操のリズムが聞こえるよ
ラジオ体操の叫びが聞こえるよ
ラジオ体操のサイレンが聞こえるよ
ラジオ体操の恫喝が聞こえるよ
胸を開けと 切り刻めと
首を折り 背中をつぶせと

ラジオ体操が呼んでいる
階段をのぼる
ラジオ体操が呼んでいる
長い階段をのぼっていく
ラジオ体操が呼んでいる
階段はどこまでも続いている
ラジオ体操
そしてようやく天頂に着いた
小さな小さなラジオから ラジオ体操が流れていた
白くて まわりには
だれもいない

 

 

 

體内

 

工藤冬里

 
 

目を閉じる癖儚んでせめて背をぴいんと伸ばしてみたりしてゐる

「目を閉じて首を左に傾けた」今では右に傾いた君

目を閉じる癖を見られてはならぬシャッター街のやうな體内

がんセンター売店としてセブンありウィッグ三体売られてゐたり

隅石の上の柱の體内は粗(ほぼ)白蟻に喰はれてゐたり

 

 

 

 

#poetry #rock musician

一片雪花,因為自身的沉重

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

一片雪花,因為自身的沉重

一片雪花
冷灰的雪原。鐵的。

通向月亮的軌道
已經休息。

呼吸之間
松尾芭蕉起身迷途。

這一刻,我們並不能
選擇。突然巴赫。

明寂的空氣𥚃,臨近生死的星辰
我們已不再談論。

因為必須的雪開始落下,
我們遙遠的血液亦重新落淚。

2026年1月21 ~23日 秋田.東京.

 
 

 

 

 

人数分

 

辻 和人

 
 

人数分だ
45個
駅までバスで15分
まず床屋に寄って髪さっぱり
まだまだ暑い9月の半ば
短くなった髪が強い風にぱらぱらっ揺れる
残り少なくなった育休の日々もぱらぱらっ揺れる
あと6日だもんね
休んでいる間穴を埋めてくれた職場のみんなに
ありがとう、ありがとう、したい
やっぱお菓子だ
デパート入って見て回る
半年も休んだからちょっと食べでがあるものを渡したいんだけど
このモナカおいしそうだけど持ちが悪いな
このプチケーキ嵩張るから持ってくの大変だな
時間ばっかりぱらぱらっ過ぎる
その時
おっ、このマドレーヌいいぞ
貝殻の形にふっくら盛り上がってハチミツたっぷり
1個300円
高すぎず安すぎず
15個入りのを3箱で決まり
人数分
45個
45の口に
コミヤミヤの泣き声とこかずとんのあくび
ばらばらっ放り込まれる
泣いたコミヤミヤ抱っこして歩くミヤミヤママの踵と
こかずとんのウンチ片付けるかずとんパパの指も
ばらばらっ放り込まれる
お会計してバス停まで歩く
まだまだ暑い9月に
抱えた紙袋はずっしり重い
ずっしりずっしり
その先に
復帰するぼくに「お帰り」を言ってくれる
45の口があるんだ