姫林檎の
植木鉢が
玄関にある
胡蝶蘭と
紫蘭の鉢も
置いてある
胡蝶蘭は
義母の
葬式に兄と姉が送ってくれた
ひとつでは
仏壇が寂しいから
もひとつ
女が買った
もう
白い花は落ちて
緑の厚い葉が光っている
紫蘭は
義母が育てていた
姫林檎はいつだったか
義母の誕生日に
玄関に飾った
春には
白い花が咲き
夏には
小さな実をつける
玄関のポストの下にはアロエが生い茂っている
盛り上がってトゲトゲの緑の葉をひろげている
義母のアロエだった
毎朝
水をやる
姫林檎にも
胡蝶蘭にも
紫蘭にも
新聞を取りに出た時には水をやる
それでも
夏の午後には撓垂れていた
撓垂れるの”撓”は”しほる”とも読むようだ
しほる
しほる
朝
目覚めてしほる
朝早く目覚めてしほる
新聞を
取りに出る
花に水をやる
植木鉢の土の窪みに水は溜まる
* 工藤冬里の詩「holy sunameri moters」からの引用