西の山が霞んでいる
見えない
山を
窓を
開け
見ている
風を入れ換える
道を行く
犬を
連れた女
傘差していない
止んでいるのか
雨
止んだのか
若狭だったか
奈良だったか
若いころ
竹林が風に揺れるのを見た
動物の背中が波打つよう
震える
揺れる
ああ
これ
背中
忘れていない
忘れられない
こまかく
震える
揺れる
そして静止する
女も
獣のような背中をもつ
こともある
物語ではない
詩
でもない
竹林が揺れていた
竹林が静止する
* 工藤冬里の詩「ふたつの詩のある風景」からの引用