エフェクトのない竹林の静止 *

 

西の山が霞んでいる

見えない

山を
窓を

開け

見ている
風を入れ換える

道を行く
犬を

連れた女

傘差していない

止んでいるのか

止んだのか

若狭だったか
奈良だったか

若いころ
竹林が風に揺れるのを見た

動物の背中が波打つよう
震える

揺れる

ああ
これ

背中

忘れていない
忘れられない

こまかく

震える
揺れる

そして静止する

女も

獣のような背中をもつ
こともある

物語ではない


でもない

竹林が揺れていた
竹林が静止する

 
 

* 工藤冬里の詩「ふたつの詩のある風景」からの引用

 

 

 

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