さとう三千魚
母の日に
女と
墓参に行った
モコも
車に乗せて
連れていった
それから
女は
エアロビに出かけていった
わたしは海浜公園に向かった
風が
強く吹いてた
波はテトラポッドで飛沫をあげていた
帰って
志郎康さんの“眉宇の半球”を開いた
魚眼レンズで撮られた写真集だ
空襲の時に逃げた中川の土手
亀戸天神の麻理さん
若い川口晴美さん
ホテルのベッドに横になる志郎康さん
書斎で裸の
志郎康さん
などの
魚眼写真と
最後に
年月場所不明の枯れた魚眼の葦原がひろがっていた
“街中を歩いていても、テレビを見ても、言葉やらイメージやらが多くて非常に鬱陶しい。そういう関係に毒を盛って毒を制するような関係が、これらの写真と向かい合った時に持てれば幸いである。”
そう
志郎康さんは
あとがきに書いている
夜には
わたし
サティの”ソクラテス”を聴いていた
第3部”ソクラテスの死”は
若い時からくりかえし聴いてきた
魂は
反復する
魂は毒杯をあおる
深夜に
モコが吠えた
居間のソファーでモコと眠った
#poetry #no poetry,no life