さとう三千魚
伊勢から
帰った
モコは
犬猫ホテルで待ってた
神は留守だった
きみは
鳥居のある
土産物屋のならびに佇ってた
貨幣を渡し
山嶽**を手にした
風呂を出て
鳥羽の朝の海を
見ていた
きみは言葉を持たない
きみと
言葉にならない声で
話した
話していた
そしてこの港町に
帰った
帰ってきた
モコを連れて浜辺を歩いた
モコと西の山を見上げてた
きみは吠えることがなかった
きみははにかんで笑っていた
* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”犬のためのだらだらとした前奏曲” より
** 山口誓子の句集「山嶽」(ふらんす堂刊)のこと
#poetry #no poetry,no life