無柄眼類の胎児 *

 

さとう三千魚

 
 

女が
台所で

洗い物をしている

水の音が
聴こえる

金木犀の木立の中で

今朝も
雀たち

鳴いていた

朝の光の中でナメクジが金色に光るのを見たことがある

柄眼類なのだろう
体の端から

触覚の眼を伸ばしていた

伸びる触覚の眼がない者が
無柄眼類というのだろうか

黒く大きな瞳をしていた
黒く大きな瞳をしていた


きみは

黒い瞳で空を見ていた

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”ひからびた胎児” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

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