生きる

 

渡辺 洋

 

 

悲しさを汗のように振りはらって
ジョンのように微笑みながら歌いたい
もっともらしいネガティブさに囲まれて
自分が信じられなくなるときには
C→F→G→Amのコードを弾きつづけよう

老人になって雲のように押し流されながら
世界のベランダを見ている
老人たちのかたまりになって
一人ひとり風に引きちぎられながら
お前たちの意味のない人生を
ふいごのような合わせた息で
吹き飛ばしてやる

神様が空気をつかんで破くみたいに
何もなかった場所に世界をひらく
ときには暴力的に
境界線上にいた人びとも引き裂いて
心たちのすみかをつくる

友だちと三人で逆立ちして
世界を持ち上げる
春風にヘソをなぶらせて

 

 

 

 

生きる」への8件のフィードバック

  1. ありがとうございます。詩を書くのは面白い。でも、人は他人の詩には何の期待もしていない。そんな寂しさがありますね。

  2. 渡辺様

    おはようございます。

    すくなくとも、
    わたしは詩に期待しておりますよ〜。

    また、詩をお待ちしてしております。

    ^ – ^

  3. 最後に残されたのが「生きる」というタイトルで、このように激しい思いの込められたものだったこと、痛切に感じます。ご冥福をお祈りします。

  4. これらの詩を、洋さんが亡くなられた今読むと、彼の求めていた理想が、理想に向かう心がひしひしと感じられますね。もう一度、自分の詩作を問い返してみようという思いになります。3月26日

  5. 痛切です。
    わたしもこの地点を考えたいと思います。

    心たちのすみかをつくる

    友だちと三人で逆立ちして
    世界を持ち上げる
    春風にヘソをなぶらせて

  6. 「かたまりになって」、「友だちと三人で」というところ、少し前までの洋さんの隔絶された一人のイメージとは違うように思いました。そのなかでの「一人ひとり風に引きちぎられながら」という死のイメージに胸を突かれるような思いがします。

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