女の土左衛門さんにそこいらの草の花を投げたっす

 

鈴木志郎康

 

 

ヒイ、
ヒイ、
ヒイ、
ピーと鳴らない
口笛吹いて、
土手を歩いていたら、
川面に、
ボロ服着た人が浮かんでいたっす。
女の水死体が浮かんでたっす。
そこいらの草の花を取って、
その上に投げたら、
一つだけ、
当たったっすね。
ヒイ、
ヒイ。

教室で、
国語の時間に、
土左衛門の
お姉ちゃんはなんで死んじゃったんだろうって、
お母ちゃんに聞いたら、
苦しいことがあったからよって、
言ってましたって、
作文に書いたら、
女先生は俺っちの頭に、
手を置いて、
黙って、
顔を左右に、
動かしたっす。
ヒイ、
ヒーチョト、
ヒイ、
ヒイ。

昔々の、
ピーと鳴らない、
口笛だったんだす。
ピー、
ピー。

 

 

 

女の土左衛門さんにそこいらの草の花を投げたっす」への3件のフィードバック

  1. 志郎康先生

    大変、大変ご無沙汰しております。
    多摩美の第1期 美術学部 二部芸術学科 映像専攻のゼミでお世話になりました、黒川純です。先生の近作の作品をいつもこちらのサイトでいつも読まして頂いております。自分は、現在、都内のハローワークで、就職支援ナビゲーターという肩書で、生活保護受給者の方の就労支援の仕事に携わっています。映像制作からは、昔、製作費用捻出で借金を抱えてからずっと離れていて、もう20年以上になります。ずっと非正規雇用労働者として働いてきたのですが、その経験を活かすべく今の仕事に就いた感じです……ですが、学生時代の自分には、まさか20数年後に自分がこのような仕事をしているとは想像出来ませんでした。実は、先日、今は武蔵美で教授になられた、小口詩子さんが教え子を動員して制作された、スメナリの詩、という映画を見に行きました。その折、多摩美の二部芸術学科が無くなること知りました……。先生は現在、闘病されているとのことでありますが、詩作は今のどうにも嫌な空気を敏感に感じとられたラジカルな作品で、いつも刺激を受けています。どうぞ、くれぐれも、くれぐれもご自愛くださいますよう。このような形での突然のご連絡、大変失礼致しました。

    • 黒川さん
      本当に久し振りですね。時折、日本人も加害者だったと言っていたあなたのことを思い出していました。それなりに自分の人生をしっかりと歩んでいるようで、嬉しいです。お会いしてみたいですね。わたしは老老病病介護の生活してます。まあ、詩書くのに専念できるのをが何よりですね。

      • 志郎康先生

        返信ありがとうございました。
        小口詩子さんが先生宅をご訪問する時、自分を誘って頂けるとのことなので、その時はぜひお会いしたいです。

        自分は最近、東アジア反日武装戦線の確定死刑囚、大道寺将司氏が出版した句集、残の月、を読みました。良い例えではないかもしれませんが、昔、初めて石原吉郎を読んだ時のような衝撃というか、30 年近く独房で死と隣り合わせの大道寺氏ですが、タルコフスキーの映画のような瑞々しい記憶の風景描写に尋常ではない凄味を感じました。

        先生におかれましては、くれぐれ御自愛くださいますよう。

        黒川純

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です