ため息をついてみる

 

白鳥信也

 

 

あごを引いて視線を床に落とし
まず ため息をついてみる
肺の輪郭をけずるように息をゆっくりと吐き出す
それからため息に釣り合うものはないか
探してみる

便器を前にチャックを開けて
おもむろにペニスを引き出してみる
それから小便が湧いてこないものか
体内の様子をうかがってみる

ポケットの中の小銭をつかんで
てのひらに並べてみる
一枚残らず
それから小銭の額に見合う商品はないものか
コンビニの陳列棚を探してみる

切符売り場で
脳裏に浮かんだ
サガエまでオトナヒトリ
とつぶやいてみる
それから財布を取り出そうとポケットに手を差し入れる
行ったこともないサガエがどういうところなのか
そこに行ってどういう暮らしをしてみようか
考えてみる

道端のアジサイが咲きそうだ

 

 

 

ため息をついてみる」への1件のフィードバック

  1. 何かをする前に一瞬間取って見る、その間に生きている実感が湧いてくる、と言葉が創り出す。言葉の力が生きてますね。

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