いちめんの

 

白鳥信也

 

いちめんのためいき
いちめんのためいき
いちめんのためいき
いちめんのためいき
いちめんのためいき
いちめんのためいき
いちめんのためいき
きこえてくるどせい
いちめんのためいき

赤や黄色や黒のいりまじった命令が
川を越えて渡ってくる

柵を用意していなかったので
命令にのしかかられてへどもどする

川の匂いのする命令は背骨を貫通し
身体じゅうのさきっぽにしみてゆく

電話をかける手になってしまう
汗のにじむ指先に

くりかえしおうむ返しする口になってしまう
泡になった唾で濡れた舌先に

濡れた何かになってしまうことは
いつもいつだって気持ちよい

いつもいつだって濡れた何かと命令のはざまに
肺腑をこそぐ風が湧く

赤や黄色や黒が渇いた絵具みたくぺりぺりとめくれあがり
指先も舌先も渇いていく

口を開いて渇いた舌を垂らしてはあはあしながら
身体は前かがみの倒れそうな姿勢になるから

ささえきれないいきが
はきだされひろがって

いちめんの
いちめんのためいきに

 

 

 

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