萩原健次郎
わたしに、実を産む力はない。
鳥も草花も、実を産む。
水が涸れる。
すこしは、水位はある。
もう、石粒が敷き詰められた平坦な川底に
見えて
納めているように
ゆがんで (かがんで
見ている。
鳥も草花も、
ぺらぺらと饒舌に、ひそかな声を並べて
均された石粒も、並び
景の棺
親しく
みおさめ、見納め
み、身の収容も、
み、
中空の、中の音 (ね、
ミ、ミ、ミ、
ミ、ミ、ミ、
ミ、
ミー。
わたしはいつかわたしとすれちがう
生滅の、身代わりを
そっくりわたしに譲る。
手渡されるのも
焦げた、み、で。
たがいに
ひとりは、坂の下へ
ひとりは、坂の上へ
駆けて行った。
川、ちょろちょろ
鳥と草、ざわざわ
実の詰まった棺、ころんころん
馬鹿にした、音楽だ。
空白空白空白空白空白空白空白空白空白空白空白(連作のうち)