駿河昌樹
低い桐箪笥の上に
さらに桐箱
その上に置いてある
毛布やら
夏掛け布団やら
真冬
というのに
真冬
というのに
寒暖は微妙に変わり続け
布団に毛布では
暑過ぎる時もある
かといって
布団だけでは
やっぱり
寒い
そんな時に
夏掛けが便利と気づいたのは
つい最近のこと
布団の上に夏掛けを
ちょん
布団+毛布に夏掛けを
ちょん
たったそれだけで
ずいぶん変わる
タオルケットも加えれば
調節の目盛りが
細かくなる
夏掛けを使わない時
そして
ひどく忙しい時
桐箪笥の上の桐箱の
さらに上で
夏掛けが
乱れてしまっていることもある
端をきちんとあわせて
ちゃん
ちゃん
と畳めばいいのに
そんななんでもないことが
できないほど忙しく
疲れている時が
なかなか多い
ある日
午後も終わっていく頃
夏掛けの
ちょっと乱れたまゝの畳みようが
ひどく気になり
急がねばならない作業の手を止めて
立ち止ったまゝ
見つめてしまった
布
布団
きちんと
畳まれていない様は
わびしい
きちんと
端をあわせて
ちゃん
ちゃん
と畳めばいいのに
していない心
できない心
ほんのちょっとの
エネルギーの足りなさ
それが
わびしい
ぱあっと
夏掛けを開き
端と端を
きっちり合わせて
畳み直した
ちゃんと
ちゃあんと
畳み直す
すると
世界は変わった
たった
これだけのことで
むかし
浄霊の勉強をしていた時
邪霊なるものや
悪霊なるものを去らせるには
整理や清掃にあわせて
物の端を真っすぐに
平行線を作りながら
直角を方々に作りながら
きちん
きちんと
隙間を空けながら
焦らず
ていねいに
置く
並べる
それがなにより効く
と知った
それを思い出しながら
ちゃんと
ちゃあんと
畳み直す
端と端を
きっちり合わせて
たった
これだけのことで