道ケージ
坂の上
その行く果てに
けやき そびえ
別に
そこに
呼ばれたわけではないけれど
たまに
行く図書館帰り
誰に
呼ばれたわけではないけれど
のぼり上がり
そこに
たたずみ仰ぎみる
何に
なるわけでないけれど
特に
何もないけれど
行くことだけに
こだわって
坂の上の欅が気になって
誰もいない
この坂
のぼることに
下る人はいない
上る側に
いく
と
背中から憎悪が剥がれ落ち
何か大切なものが
坂を転がっていく
あの夏
「死ぬ間際の光景、見たことがある?」
死にたがりのマリーが
坂を上がるや
振り返りざまに聞く
蓮の葉一つに
「あるわけないじゃないか
あったら死んでる」
蓮の葉さらに
「涙を拭おうとすると
手が骨になって
丸くて
白すぎて
拭えない…」
蓮の葉に
つばきす
けやき
空に
青い