もぐらの記憶

 

正山千夏

 
 

記憶というものは
罪なものですね
失くせば哀しいけれど
あればあったでとってもやっかい
ならべてみたり
くらべてみようとしてみたり

穴ぐらのなか
這いまわる
まるで水を掻くように
ヒゲに当たる砂や石の感触
ミミズにあいさつして
今日もねぐらに帰ってく

目覚めれば朝
昨日のつづきはこう、
そうやってじたばたすること自体がたいてい
私を光の方向に導いている
くらやみのなかをつらぬく
太陽のそれ

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です