長尾高弘
多摩ニュータウン大通りってのがあってさ、
ずいぶん立派な名前なんだけど、
実際立派な通りでさ、
片側二車線、
ペンキで塗っただけじゃない
本格的な中央分離帯があって、
街路樹も植えられてんだよね。
もうニュータウンってほど新しくないけど、
立派な街の風景が広がってるわけ。
でも、ちょっと脇道に入ると、
いきなりトンネルがあってね、
そこを通り抜けると、
田園風景が広がっててさ、
肥溜めの臭いがするときもあるのよね。
さすが、宮崎駿映画の舞台に
なっただけのことはあるわけ。
でさ、この脇道の方の話なんだけど、
信号つきの横断歩道があるのよ。
その信号がさ、
結構夜が更けてきても、
押しボタン式とかにならないで、
律儀に色がかわるんだよね。
まわりは畑だからさ、
誰も渡らないで終わることが
多いんだけどね。
クルマで通るとさ、
正直なところ、
なんでこんなところで
止められなきゃなんねえんだろって
思っちゃうわけよ。
でもね、
こないだわかっちゃったんだ。
なにしろ宮崎駿映画の舞台になったくらいだからさ、
俺たち凡人には見えない
トトロみたいな存在がいてさ、
横断歩道の信号が青になったら、
そいつらが渡ってんだよ。
目に見えないくらいだから、
クルマなんかに轢かれたりしないんだろうけどさ、
クルマと身体が重なり合ったりしたら、
やっぱり気分が悪いんじゃないかな。
ただ、そうだとしてもさ、
そのトトロたち、
二、三分に一回道を渡ってるわけだからさ、
ちょっと多すぎるんじゃないかな、
とは思うんだけどね。