駿河昌樹
雲があのあたり
指のように下りてきている
煙のように
薄紫色がかっているので
薄紫のように
と言ってみたく思うが
日本語は許してくれないだろう
どこの言語なら許してくれるだろうか
そんな許しを求めて
求め
求めて
詩歌のかたちを借り続けてきたが
詩歌でさえ
めったなことでは
許してくれない
雲 あそこ
指して 下りてきている
薄紫して
と
すこし近づく
下りてきている
でさえ
ひどく離れた嘘の言い方で
ほんとうなら
下り 来 る
ぐらいに言いたい
わたしは
ほんとうに
助詞
助動詞
が
きらいだ
それらを多用した詩歌
それらに頼った詩歌
が
ほんとうに
きらいだ
と
助詞
助動詞
を
わたしだって
使っている
浸かっている
雲
あそこ
薄紫