今井義行
おたがいに
I Want You です
もしも 私たちが結婚できるなら
アルジェリーはドーハで労働契約を更新しない
2020年の話 ─ ─
2020年の6月に私たちは
フィリピンで
教会結婚式を挙げるつもりである
私は障害者である上に
とても 貧しい
しかし あなたは
ビデオ通話で 白い歯を見せて 笑うのだ
「ノウプロブレム 」
Facebookで知り合って
2016年からのつきあいになるね
実現するのなら
あなたは
結婚ビザを得て
日本で 労働契約をする
輝く場を獲得する
そして
次女の アンジェラが
学校を卒業したら
フィリピンから日本にきて日本で活躍する
それが おたがいの
I Want
あの日・・・・・・・・・・・・
「肌のいろが醜いよ」
こころにもないこと言っちまって
遠距離で口論になった
「ええ、あたしは醜い」
「ええ、あたしは醜い」
「ええ、あたしは醜い」
貸すよと言ったおかねを貸さずに
ブロックしてしまった
まわりに反対されたから・・・・・・・・・・・・
醜いのは、私の方。
あなた、よく私を赦せたな
その寛容さは
一体 何処からくるのか
ローマンカソリックか
あなた本来の 人格か
きっと 両方だね
私はあなたに敬意を持つようになった
約束するよ
私はあなたを しあわせにします
私はあなたとあなたの家族を愛しぬきます
あなたのパパもママもきょうだいも私の妹家族も
私たちは 1つの家族になる
みんなで 大きな家族になるのだ
そんな簡単な話じゃないことは
わかっている ────
2020年にも
入国管理局は 厳格だろうし
私は 生活苦に瀕してもいるだろう
けれど 午前2時 今日も
あなたは ビデオ通話で笑う
「ノウプロブレム」
褐色の肌のあなた
チキンステーキを頬張りながら私にメモを見せる
2020年6月までの
経費の 試算書 ────
足りない分は 持っている人が助ける
「私たちは、家族ですから
できないことは ないです」
「私は力を尽くすよ、アルジェリー」
「前だけを見るのよ、ユキ
私は、日本で死ぬまであなたと暮らしたい」
「OK 何の異論もない」
「フィリピンに土地があるの
そこに6部屋のアパートを建てて
私たちの 副収入にします」
「プロパティ、
それは 私たち2人のものです
あなたが働けないなら
私が働いて助けます
私たちは夫婦になるのですから!」
2020年の1月には
私はフィリピンに渡り彼女と合流する
私たちは 40日間を
彼女の家族たちとともに過ごし
婚約者として 紹介される
それから私たちは
次女のアンジェラと3女のペンペンと
いっしょに
ボルケイビーチへ行って太陽の光を浴びる
私は太ってしまった体を
からかわれながら
家族と 水しぶきを浴びせあうだろう
それが おたがいの
I Want
アルジェリーは
日本の工場で働きたいと言っている
私は
アルジェリーに言っている
「ユーハヴアチャンス」
「ユーハヴアチャンス」
そのような話 先日
作業所の 施設長の岩崎女史にしたら
しばらくしたのち
「うひゃあ」としりぞいていた
生活保護予備軍の私から
まさかそんな話が飛び出すと思っていなかったのだろう
「でも、素敵だわ
大変だとは 思うけれど、、、、」
「おたがいに
IWant You なのです
作業所の みんなが おたがいに
IWant You で あるように」
「私、良い 結果を
祈っているわ ────」
「どうもありがとうございます
それでは 今日は
これで 上がります ────」