小関千恵
胸より大きな球体を詰まらせて
真夏の商店街をワニのように歩いていった
立ち止まれなくて
まだ無くしてもいないものを先で探そうとする
空事だけをさらけて進んだ
赤い手に撫でられなければ死さえ生きられなかった
箱の中の
青草の中の
「少女」という輪郭
即物者たちが慌てふためき抽象は撤去された
月が落ちてきたみたいに視界の全てを白く覆った
還る場所に
まだ温度はありますか
この世界で
撫でられた肌が永遠であった証明を
何度でも
何度でも
2つ椅子を置くこと
“I’ll keep it with mine”
父権よ
少女と呼ばれた誰かはあなたではないか
箱の中のものを出せるか
いつか
母とふたりきり
月の色をした最初の部屋で
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