葛藤のないもの

 

正山千夏

 
 

外で遊ぶ子供の声が途絶えた
きっとお昼を食べに家に入ったのだろう
雨の音はしないのに
通るクルマの音は濡れている
私はまだベッドのなかで
朝の憂鬱とたたかう

腰を曲げ頭頂を天空に向けるために手をつく
今現在の私が今日を生きていくために
まずしなければならないことは
たったこれだけなのに
自律神経は逆らう
腹痛を起こさせる

私の自律神経は
何を期待し何に落胆しているのか考える
眠り続ける快楽を貪りたい欲望と
日が昇ってしまう落胆

1日の終わりには
また葛藤する
夜更かし光の快楽を貪りたい欲望と
日が暮れてしまう落胆

私のシナプスは
何を期待し何を恐れる信号を通すのか考える
落胆の経路が太くなれば
小さな恐怖の経路となるのか

せめてもの小さな抵抗の集まりが
私の人生の動きを鈍くする
そのせめてもの抵抗とやらは
一体だれに対するものなのか
全体何に対するものなのか
私はすでに起きて詩を書く今

午後は静かにおし黙る
きっと家に入って夏休みの宿題でもやっているのだろう
もう子供の遊ぶ声も聞こえない
どんよりと垂れ込めた雲
それを切り裂くように鳴り響く
町工場の金属音と打撃音

 

 

 

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