工藤冬里
三四郎は感嘆した
そこまで心を広げることができるとは
心臓がどきどきして苦しい
八つ裂きに遭うまでの命だが
茶色いアジアが広がってゆく
土塗れのモオヴよ
司書を目指す
胡座の十代
映画は黄色い肉が引き攣っている
丘の腹に墓地がある
黒い背広は着ない
爪先のクリーム色
嵐ヶ丘で引き千切る
セの発音の群青の空
胡座の十代の声
平行線をつけ足すことで絵にする
伏せた傘の手の切れそうなエッジ
乳白の青が帯となっている
がしっと植えられた木が今
金も内臓も場所は決められている
手伝ってくれる動物がいない
私は憎まれる
グリス塗れの球がシャフトのベアリングに詰まって黒い