羽根木

 

工藤冬里

 
 

カオリナイトではないので
背骨はなく
土塀の芯の竹もない
摘んでもバルゴンの背鰭も餃子の羽根もできない
粘土でさえないのだ
私たちは何を摘んでいるのだろう
皆九十近い老婆なのだ
蛞蝓のようにローム層は立ち上がらない

https://youtu.be/M2EDPuVV43M?feature=shared

 

 

 

#poetry #rock musician

enemy but comrade, at all times, down to the last

 

工藤冬里

 
 

目が白い穴のようにひかり
ふたつのメダルは皿のように海を分け
いないこどもをいたわることさえしたのだ

ああなんでとうめいな黒い羽根がないんだろう
ガザの美容室で
味蕾は十万種を夢見る

うまくいかない時ほど
しわあせになってほしいと思われているのだ、と••

透明度を自分で選び
画面上を滑る指先で
AI動物動画のような未来が稚拙に描かれ
物も時間も作られた捩れだと逆に知れる
ヘロインがライフでワイフなのと同じだ
脂肪肝を切り分けるナイフ
敵(カタキ)で同志のペイン
敵(カタキ)で同志のワイン
ラジカルミキの敵(カタキ)で同志
敵(カタキ)で同志の
いつだって、最後まで

 

 

 

#poetry #rock musician

立姿

 

工藤冬里

 
 

できる限りのことをした後に
立っているならばそれは
ゆうれいではなくそれは
照らされた型紙ではなくそれは
情に絆されたフォーク野郎ではなくそれは
痛い思いをするかもしれないがそれは
足りないものを買い揃え
ほねを組み立てりったいを作る
まひするほど動けなくても
組み上げるちからは良いもので
曇ったメガネで手を伸ばす
変色するすべてを拒否して立つ
骨にはヘビの毒が流れている
唇の裏からそれは迸る
鼓膜の裏までその気は繋がっている
住み続けることの困難を打ち明け
鼓膜の外の圧を感じながら
立つ
目を瞑ると立姿は切り抜かれる

 
蝕まれた立姿をオンコロジストが収集して
浮世絵のグラデーションのクリアファイルに挟んでいる
一週間寝ていたのに
助けを求めることができると知れただけで
助けは求めなかった

 

 

 

#poetry #rock musician

frill

 

工藤冬里

 
 

キックしても噴かせないのは分かっていた
春になってもまだ遅すぎるフリルの
摘まれた内気

内容も色も羽根にして
焦がす
子供たちは縁(へり)が好きだ
内実よりもパリパリしたひろがり
死んだ娘の翻るフリルがもう一度キックを願い求める
掛かるかもしれない予感にガソリンが漣を立てる
無謀な未来が音を立てる

皆フリルの未来を知りたがる
手が打てるからだ
交換後残された者でやっていくパーティー
ボクから離れよ(2tem3:5)
潰れた店で在位のケーキセットが出てくる
年代計算を闘う土偶と埴輪にとりどりの蛍光管が巻き付く

上り切った三階の踊り場に灯り代わりのストーブが
一行の三十万を湿らせ
裸にして食い尽くし火で焼き尽くし
反転自制も燃え尽き
ボクの攻撃は非常に激しい怒りを惹き起こすことになり
ほんのもう少しすればボクはいなくなり
温厚みかんは喜ぶがもう届かず
半分まで満たされるべき理由がI want to!
写真並べたりするフリル

 

 

 

#poetry #rock musician

haven’t yet passed away

 

工藤冬里

 
 

小さい男だった
小さい男だったが
ぼくはさらに小さかったので
包むこともできなかった
今年も梅は受粉せず
梅干屋は潰れるだろう
こうして時事を取り上げるのは大切なことだ
ラリったときの愛のように
表情は人種を跨いで
タッパー毎に曜日を書いて
ドネツクで爆発に遭う
それでも立っていられるか
麺が口に上っていくように靱帯も内部をスルスルと飛行するが
蝋燭で澱んだ夢と同じで
最後の言葉はない
この忍従が
うれしさと結びつくなんて知らなかった
まだ過ぎ去っていない〈以前のもの〉の中で

 

 

 

#poetry #rock musician

標野(open field)

 

工藤冬里

 
 

息を吸うのとシャッターを切るのが同時であるような
顔と半身を透かす文字群が配されている瓶
全く別の国に入ったみたいだ
標識も違うし

虎色は溶けて頽れ
愛想尽かした黄色と薔薇色
水色に紺の運河
大砲が火を噴きそこだけ白く剥がれる擦れ方の
発信源を探ると虫瘤のイスノキ
守ることも破ることも簡単な空洞だった
置手神
鱗から落ちて開くのか覚醒して食べるのか
祈れと言う三人称に属さない終止符
殴らず撃退する点猫法の算数
地上に望むものは何もない

 

 

 

#poetry #rock musician

田作

 

工藤冬里

 
 

脱ぎ捨てる力がないまま
折れた首をエアコンに晒している
死ぬ前に食べたい太肉
人を贈り物にして
睡りを返礼とする
釘に食事を食事に田作を
建てられずに折れた首の
いつか食べられる気配を睡る
写本の夢を睡り
晦日のスーパーを睡る
一飛びに明けてほしい
屋根瓦の日々は崩れ落ち
永遠にhappy new year1969と叫び続ける釘を
雲の隙間から眺める
(見られていることの方が見ている主体を上回っている)

 

 

 

#poetry #rock musician

theʹle·ma

 

工藤冬里

 
 

包まれて
落ちて割れても包まれて
種子法に逆らい
栽培する揺るぎない
炭素追い出す鍛冶
リニューアルされ
限界がない
あらゆる局面に当て嵌まる完全さがギラリ
友よ羽織の妊婦よ
知らなくても良いことがあるのは良いことだ
包まれた餡は大成功
車輪の音
売春の街で
湧く水を上から見る
theʹle·ma
さまざまな頭蓋に響く言葉もしくは音波
昔の道に降り立つ
保険も入らずに
土を破り庇を圧し潰す
消失ですから
変わらぬ山影
四〇日間で何人に遭えるか
誰を探しているのですか
頭蓋に3D Rabboni!
仕事を任せまくるため
だけではなく
朝のひかりのなか
なんの服を着ようか
長時間は持たない
ふたたびやる気を起こさせる
余命なんとかのなんとかみたいに

 

 

 

#poetry #rock musician

「そだつのをやめる」青柳菜摘

 

工藤冬里

 
 

冒頭、無題の十行で単語たちの連結の、休日特快の詩法を語る。
そして「ユキちゃんユキちゃん」で「常に流れる水」が雑魚駅を潤すことが保障される。
「土のなか吐いて潜る」でword設定で大人になった身体を右寄せにしたことが知らされる。
「製紙工場の白い紙」は早くも書く身体が書くことにぶつかった情景が描かれてしまう。
「体温のない吐息」で子供の身体を取り戻そうとするが西武線に特快はない。
「ソテツはぼくの名前」でありがちな窓を探し
「メロンソーダの巣」で諦めを発泡させ
休止に入る。
「夜の箱」でとうとうキョリを変えてみる
「製紙工場の白い紙」をその方法で書き直す
「放射線ドッヂボール」でねんれいを明かし
「夕暮れの黒い土手」「風呂モニュメンタル」で戻ろうとする
「メロンソーダの巣」「夜の箱」はそのことをせつめいする
休止
「鍵あなのドジョウ」はにじゅっせいきぶんがくの旗手たらんと欲し
「セミ」はドジョウと違ってアイスと一緒に食べられている
「はしごの先」は月に掛かり
「待ちあわせ」は鬼火
「飲んでるふり」で「常に流れる水」を忘れ橋の幻想に詩法が横滑りしていく
「蚊にさされ」で存在はただ痒さとなる
「グラウンド•タイムスケープ」で「常に流れる水」を思い出そうとするが
「夕日を見ない」「手のなかのチョウ」では「常に流れる水」ではなく成立させようとしているものと「常に流れる水」とのキョリであることが告白される
休止があって
「三本のチョコバナナ」では墓場まで持っていく罪が、
「外側の動物園」では自分のものではなくなった詩法が語られ
「夜の箱」をまたカクニンしてみる
絶望的な休止
「中学二年生」は散文であって
「死んでない」は断念であった
「ジェットエンジン」は別の水だ。時間の三日月湖。
「さがしもの」の行空けがくるしい
「遠くから見る現在地のピン」で空に気付き
「授業予知」でソテツに逃げ
「土のなかのチョウ」はメタモルフォーゼのために蛹のなかでいったんドロドロになり
「小さな虫大きな虫」で「常に流れる水」なしの希望が語られ
「空気のかたち」で一安心させられるが
「雨がみえなくなる未来」「ただ光るだけのLED光が照らさない」でひかりのない滅ぼされる側に。
最後のインターミッション
「鍵、てのひらのチョウ」「常に流れる水」なき鱗粉の彼方の日常へ。

 

 

 

#poetry #rock musician