holy sunameri moters

 

工藤冬里

 
 

-1.先週までのあらすじ(ネタバレ)

人生のアーカイブ化を図るK(60)は、文壇もとい分断された詩の場所を統合しようとして失調し、ウィーン分離派があるなら日本分離派はないのか、などと呟きながら財布ごと銀歯を失くした呂律の回らぬ頭で反メルキゼデクを妄想する。空港近くで避難警報を受信するが、町の避難訓練だと分かると宙吊りにされたままビッグコミックオリジナル9月20日号佐藤まさあき「夕映えの丘に」再掲を読み、モノクロームの線が赤より赤いことに驚く。遠藤水城の満を持したアイトレ文に刺激され、「痺れるような柔和さと燦めくような分かり易さで諸体制の延命を図る頭脳らの世俗性を俺は拒否する/体制に延命など要らぬ/今滅びろ」とツイートする。青い朝顔の、午前中だけ続くその栄光を活ける。ブレードランナー2049を観、未来はなく過去を変えることでしか今の栄光はない、との思いを強くする。三万いくら入っていた財布を運転免許やカード類と共に失くし、タイヤをパンクさせられ、映画館駐車場の側溝に落ちて左大腿骨を強打し、巣立後のオスの足長蜂にまで刺され、身分証明にと持ち出したパスポートまで失くした状態は、自分が地雷として愛を定義してしまったことに因る彼方側からの攻撃と信じ込むが、金を拾うなどのいくつかの不幸中の幸いとでも呼べる出来事があり、幸福とは不幸度7に対して3くらいの割合で生じてゆくものだなどという間違った人生哲学を開陳するまでになり、止揚を相殺と訳すノヴァーリス、偶然と悪霊が殺し合うのか、などと分断/統合の結末を呪いながら、切れた筋肉に絆創膏を貼って灰に赤い糸の混じった眠りに就くのだった。

 

0.創(キズ)

目覚めれば満身創痍と分かるだろうきずをつくると書いて創造
絆創膏剥がす速度を速めればきずなのきずは一瞬で済む

顔の上で
金八先生のようなことを打っているうちに
また寝てしまい
緩んだ手から眉間に降ってきてさらにベッドの
下の硬い床に落ちました
慢心創痍工夫

 

1.次の日

チャンジャ高かった?
よく見れば灰とピンクでアルトーぽい
白にも色々あるね
車を選ばされる社会
先生 トイレに行っていいですか
と言えず池田さんの足の周りに水たまりが広がっていった
過去を変えるだけのヒーロー
文字を立体にするだけの落書きが
後の映画のエンブレムになろうとは
レプリカントの血のように
弁当のチャンジャ
国分寺の坂を下った
深夜もやっている定食屋で
若い人達はチキンカツ定食を食べていた
そこでチャンジャを見つけた時は嬉しかった
幕の奥に振りかける
イエス、幕は肉体である
故意の恋の罪に犠牲は残されていない
最後から二番目のセミがまた啼き出した
背広は袖が狭くて手首が入らない
どうしても死が必要である
代わりの血で契約を
地平線近くで興ると雄大に見える
濁点は付けないでくれ
おしゃれ泥棒
心に置き頭に書く 法律
撓垂れた観葉植物
拓輝は ひろき と読むのか
みんな親に似てるなあ
親の親を五十代くらい遡れば
もっとトマトやキュウリが出来るだろう
地上に建てるものではない
前に話したじゃないですかー
ここで眠くなっちゃった
インタビュイーはこたつの中で髪を七三に分ける
次の日を心配しなくていい
次の日はない
次の日を末席に坐らせる
私は次の日である
過去が、次の日なのである
声たちが、席に着いている
次の日は招待されたが断った
駄菓子屋のような風が吹いている
露地や小径に行き、誰でもいいから無理にでも連れて来なさい
笑ってない

 

2.居酒屋「ラッキー」にて

いっぺん病気でもせんとこりゃ無理やな
でもこれは所詮にんげんのものがたりだ
なんてこった
柿の実が俺に当たる

 

3.すっからかん節

すっからかん
すっからかん
ジャック・ラカンもすっからかん
五百羅漢もすっからかん
次の日はない
妄想の中で過去を変えることの中にしか
希望はない

 

4.敵の土地で朽ち果てる

告別の間僕は眠っていた
言葉は洞門の内壁を伝い
上流に抜けていた
認知が完全に進んだ時
司会者が町にやってきた
鳥籠を持って
羽が生えるのではない
羽で覆われるだけなのだ
今はセメントが居留地を覆っている
黝ずんで、SFのセットのようだ
破戒的な疫病が蔓延し
竹冠と草冠を取り払った剝き出し
真昼の決鬭から門構えを取り払うとどうなる
災厄がテントに及ぶことのないためには
鳥籠を避けなければならない
上流で言葉は禁令という石に打ち付けられる
正面から攻撃してくるのはライオンとコブラ
禁止の報せを帯びたディスプレイは青味がかっていて
迫害自慢の目隠しを外せば
吹き抜けの夜空が見通せる
手を並べ小さい恐龍と大きい恐龍、と言う
蓋を開けてみれば、
あるいは蓋から草冠を取り去ると、
私達は石のように笑っていなければならなかった

私は敵の土地で,生き残る人たちの心を絶望で満たす。彼らは,吹き散らされる木の葉の音に追い立てられ,誰も追い掛けていないのに,剣から逃げる人のように逃げて倒れる。誰も追い掛けていないのに,剣から逃げる人のように互いにつまずく。敵に抵抗することができない。 国々で死に,敵の土地で息絶える。(lev26:36-8)

荷を負い、外国に引っ越すべきか
隠し場所を決める
口籠で守る
口籠から竹冠を取り外すと
詩は用語を変えて
分裂したパーティーは長く続かない
牛乳パックの絵のように
或いは夏ツバキの幹のジグソーパズルのようにして
嫉妬を克服した
バレエの骸骨
追うマンガ
敵の土地で朽ち果てる (lev26:39)

 

5.共鳴しない秋の歌

君がいるのはいけないことだ
と歌う声がカーラジオから流れてきて
ぎょっとした
なやみつかれてまちのなか
と続いた
草野さんの声だということは
その頃にはわかっていた
検索すると
悩み疲れた今日もまた
だった
研究?している人もいて
カレーという語が出てくるのは
エンケンへのリスペクトだ、
ということだった

 

6.道連れ

死ぬ死ぬと言わせ
それはこういうことかと言わせ
受け身を加速させ
道連れの豚の群れに
ひこうき雲を聴かせて
食べられない体にしてから殺す
せめて食べてくれればいいのに
分かりました
フェストフード店に
言っておきます
あなたを食べた生き物を出しましょう
ありがとう
それでこそ政治家だ
どういたしまして
それがアジェンダとしてファーストですから
ああ
何とかの何とかが第一てやつのことですね
ありがとうありがとう
では一緒に歌いましょう
ごりん ごりん ごりん
りんごはごりんじゅう
じゆうなりんご
りんごは捥がれた
ところで
移動を禁じられるとは思ってませんでした
江戸時代はそうだったのは知っています
りんごは
自転車でモールに行き
百均で働いているだけですから
いいんですけど
農協も忙しくて
頼んでも田植えに来てくれないので
ふしぎな単一の植物がひょろひょろ伸びて
メキシコのさばくのようです
一度行ったことがあります
国境付近でした
UFOしか観光資源がない町という触れ込みで
プラダが店出してました
砂漠の真ん中にぽつんとプラダ
プラザ合意って知ってますか
留学したのはその前です
気分は田中英光でした
その頃は連絡船の出航用に紙テープが売られていました
海に色が溶けて
汚染といえば汚染でしたが
分かりやすい汚染でした
私企業とか紙テープとか
ウカマウがよくやる、
責を負うのは誰それであるという
分かりやすいターゲット設定の快感
それが今は
マリオネットだから
マリーアントワネット
ネットのマリオ
マリというオネエ
デラックスなターゲットだねえ
キンに目を向けさせる
キンのマネー
マネ菌

禁令下の
ジャーマネ
ゴダール曰く
いまや蚊の方が真剣だ
道連れで壁という曲を思い出したんですけど、元の詩は
たくさんのかべ
たくさんのおり
たくさんのろうや
それがくずれるとき
わたしの体も破裂するのだ
花をつめ
花をつめ
うつくしい花
すぐにくさってしまう
うつくしい花
という、シュトゥルム・ウント・ドラングの詩人レンツの影響下にあった礼子によるロマン主義的なものでした。初演は椎名町消しゴム画廊、角谷と礼子と僕の三人でした。その数年後に出たピナコテカ盤の、道連れのキクノハナ、という歌詞は、欠落を埋める気質のある攝が忖度して付け加えたものです。崖から飛び込む道連れはいいからきみはもう独りで歌え。

 

7.エンドロール

財布は戻り、事件は解決した。しかしKの胸にはいつまでも消えない重苦しさが残った。

「あの、俺さあ、もう詩人刑事やめようと思うんだ。所詮俺の居場所なんてなかったんだ、ってね。」
「それな」
「・・・」

 
 

シーズン2-1に続く クリック

 

 

 

アルシーヴ

 

工藤冬里

 
 

‪分離はほんらい‬
ひとつだったものの記憶だ
剥がそうとすればするほど
上へ上へと逃げる

父も母も系譜もなく
いつ生まれていつ死んだかも分からない男に永遠は属する

歯が無いので呂律が回らない
呂と律で楽となるが
楽の音は廃され
契約は新しいものに取って代わられた
あらゆる通知がそれを知らせる
その度に携帯は震え
避難訓練だと教える

洗濯機の渦の中に愛情を流し込む
夕日のパノラマの中
車は赤より赤くモノクロームを走る
オタマジャクシの呂律はデジタルなマーカーで蛙の項を囲い
バターナッツかぼちゃのラインの分かり易い契約を知らせる
揺れる謡の展示の延命

痺れるような柔和さと燦めくような分かり易さで諸体制の延命を図る頭脳らの世俗性を俺は拒否する
体制に延命など要らぬ
今滅びろ

体がない!
きっと病気になる
欠落と妄想を上に分離して
完全にアルシーヴの時代となった
glory,kept open
未来はなく過去を変えることでしか今の栄光はない

タイヤは換え此方側familyの善意で手帳は見つかったが体がないので生贄としての財布を失くす。それは愛の定義の暴露に依るものだから隙とかじゃなく防ぎようがない。此方側の認知の問題ではなく彼方側の悪意の問題なのだ。非道く攻撃され灰は糸の血を咥え てれん とした朝だこと
止揚を相殺と訳すノヴァーリス、偶然と悪霊が殺し合うのか

更に蜂に刺される
溝があるのに気付かず大腿骨を強かに打撲する
パスポートも失くしたことに気付き

 

 

 

愛とはなにか

 

工藤冬里

 

夢の方がまだ良かった
夜叫ぶ鳥等がその証拠だった
万能感に打ち拉がれるよりは
夢の中に早く入りたかった
寝ながら人を殴るとしても
夢の中の方がまだ良かった
夢の中では二色の車のドアを外した
黒い方のドアを燃やさなかったことで女が金切り声で歯軋りした
誓うことで論争は終わる
夜叫ぶ鳥等に誓うことで論争は終わるか
今年は冬瓜を見ない
産直市とかでまめに探すのだが高知にも愛媛にもなかった
不作だという情報さえない
冬瓜に何があったのだろうか
熱帯化によって旧来の夏野菜はうまく育たなくなっていると野網君が言っていた
朝顔が秋の花になったように私たちの夏は秋になり、太陽は木星に、月は血に変わるのだろうか
夜叫ぶ鳥等よ
夢の方がまだ良かった
きみたちがその証拠だった
万能感に打ち拉がれるよりは
夢の中に早く入りたかった
寝ながら隣人を殴るとしても
夢の中の方がまだましだった
夢の中ではドアを外した
黒いドアを燃やさなかったことで女は金切り声で歯軋りした
自分より偉大な者に懸けて誓うことによりどんな論争も終わる
その誓いは法的な保証だからだ
歯は前線の城なので
マウスピースはあたためておけ
公民館のワタナベとマツモトの子らをがっかりさせて
町営住宅の 来た道を急いで戻る
アイダさんが見にくるとりかえしのつかない夜に
特攻の蚊が遠くで
サックスよりも遠くで
墨流しに似た白線の平行移動
マル・ウォルドロンのホールトーンの平行移動
カミナリもありまっすぐには降らない
点々だし
マスクメロンを被っていた
藤井マリの消息を久しぶりに目にした
カボチャは売られていた
冬瓜
夜叫ぶ鳥等
身軽になって
やさしさの反対に除き去られ
富はわたしたちの為に使われ
痺れが辛さに対するように
四次元から感情を見下ろす
示されたのはモダニズムの線の限界
海底の山を飛行機から見下ろす
額には三つの海
手の平は甲より厚く柔らかく
高さと低さの測定の為に
1㎠に2500のセンサーがある
無人の店の実の正しさは
予測できる富の消滅
忘れ去られていく死んだ人々
シーズン2まで形作られた
論理と思われていたもの
シルバーヘアの内面が黒
宇宙外の服の人がいるけれども
外はいずれ衰える
前もって考えた
親に育てられなかったが
根から青く変わった
コンクリートさえも輝く
ダクトはクジラ内部の乱視のイカのようだ
塗り絵の囲み線に
夜の水色を乗せる単純が
壁に髪ごと埋め込まれている
吊り梯子で外縁へ出、
家族の言うことを聞かない
卵子星のヘリウム→炭素 爆発
星 と 人 にも示される
ザラメの回転の 声
崩壊は意図されていたものか
大気は断熱材として
ヨクちゃん
竹という草は
家や服に
草津のヨクちゃん
赤ん坊の黒目がちに戻れたら
白クマの毛は透明だが
皮膚は黒なので鬼萩
体温は37℃をキープ
動物は永遠に生きない
二千億の星のキズナのいわれ
矯正のいわれ
他愛のない言葉に
脱ぎ捨て 身に着ける
断熱材としての家や服
四肢の整った
青髯の身分証明
脱ぎ捨て 身に着け
犀を抱いて二人で歩め
と陰影明朝体で発音する
魚の顔でギャングに会う
夢の中で殴ってくる
夫のいない天候
落下する胸の水
子供というより子供の気絶死に気を配り
あやめのセットアップを手伝う
必要な土に還元され
根差した垂直の労苦
パンツを履かされた石
一つ選び 継続する
人類だけでなく 私に
一つ選び 継続せよ
裏の裏を裏返して
すっかり疲れて元気
夢の中で殴る
燐寸とは誰か
薪を割り変化を補給する
高知の魚の下顎の歯の列
落葉眼に降るジャングルで霊的に餓え
撫で肩に従う
爽××××
顎のラインがしんちゃん
鰐の蝦蟇口
一日二ドルの収入
海はその深さによって分断すると同時にその名のさらなる深さによって私たちを結び付けている
絶えない体
絶縁された体
配偶者の必要に敏感な
カフカの耳をしているが
この辛抱は本物だ
温和 温和 温和
敬う
その概念さえない中で
示し方を教える
褒めすぎてはいけない
自慢する姿を見せない
おきてがまもりとならなければならない
誓いにより論争は終わる
夢の中では悪魔が興行していた
他の岬の境界にある仮の建物で
見知った人々がパゾリーニ組のように役を演じていた
夢が妄想以上に経験に食い込んでいることに気付いた
ロッヂにはハンバーガーの名前が付いていて
ラファエルを通して祈っていたので舞台は剥がれた
便所裏の草叢で
最初は家族だったと思い至った
その思い出を体系化しようとしたのだ
韓国朝鮮語特に韓国語手話のメンタリティは半分海峡に埋まっている
感情は役に立たない
感情ではなく行いによってしかそれは示されない
感情は後から付いてくるだけだ
それは終わらせることができない
それは永遠に続く
それは感情ではない
パゾリーニ組の劇団シナプス
それはやさしさからは程遠い
それは感情ではない
感情は遥か下に見える
麻から眺めた辣のように
被抑圧者への同情も抑圧者への感情も支配者の論理に絡め取られる
巧妙な椅子のすり替えによって
わたしからノートを取り上げ替えたばかりのタイヤをパンクさせた
支配するとは支配していないふりをするということなので
偽の為政者を立てることまでして隠れようとしている
憎悪を見える為政者に集中させるためだ
だから感情は役に立たない
感情移入の能力を利用されてはならない
犀を抱いて二人で歩むためには
夢や妄想ではなくストレスの中に棲む戦士でなければならない
その定義ではなく実戦のテクニックを教えなければならない
それは

 
 

 

 

 

in all these things

 

工藤冬里

 
 

ひくいところや
たかいところで
いろいろないろで
それをうえから
わたしのばくはつをうえから
にくのひろがりをうえから
じゅうおうの矢印は
腸の位置にあり
肉色の柱
モオヴの路電
ラーメン構造
赤玉が隠れた洞門
羽があって手があるもの
水の色が心持ちを決める
入口と出口が無数にあり過ぎて
わたしの花火は
はらわたのストロボ
洞門ミミズの内部をトラベル
ストレッサーとしてのトラブル
内壁を伝う音声の未来
円熟というより 立ち直りが早すぎる
人のことまで考えて

おりこうなこえはいつかはがされるのだろうかいや
in all these thingsそれらのことがあるなかで
かんぜんなしょうりをおさめています

in all these thingsそれらのことがあるなかで
音声はかんぜんなしょうりをおさめています

 

 

 

高知

 

工藤冬里

 
 

手放し運転
手放しに喜ばれる
暴風にフェンスの蔦が靡く

白く装っていても
中身はドロドロ、みたいな

殖産興業の
谷を朝市は
痩せ細り
暴風は
何でも売れます

警報だらけの
仁淀川
ドレスの白から
白を抜け
木々は靡く
おいでおいで
赤い橋を渡れ

フロントガラスに
溜まる雨粒
ワイプアウトされない
航走履歴
飽和状態で推移していく
仁淀は殆ど湖

通行止めになる前に
この白を抜けろ

枝の散乱
緑の橋を抜け
白い橋も抜け
ここから川は逆に流れる

ここには遺跡がある
黒岩
遺跡があるのは
風がここで止まるからだ

ここで最後のひぐらしを聴いた

* *

針の穴を通すように俯き
筵の上で一点を凝視する祈りの横顔
デザインされた横顔の高知
家の中の蛇は放って置け
すべての小富士に登れ
空いたアパートの部屋をゲストハウスにすると
なりすましのカップルが住みついた
昔は葉を食べていた
今は蜜を食べている
となりすました蝶disguising transformerは言うが
心など信用できない
肉の代わりに石を食べたって本当ですか?

* *

川は逆には流れていなかった
久万からさえも
変容と変革のからまりのように
私たちは太平洋に転がり落ちる

 
 

 

 

 

なりすましのバラード

 

工藤冬里

 
 

一行目を抜かれて
すでに発生していた
わたしはすでに発生し啼きはじめた
蛇腹を震わせ
音図ozと立ち上がった
ozOzと進路がずれていくことはわかっていた
ずれた
ずれたままバスは進んだ
透析の血に脳が追いつかなかった
即ち脳は萎んだ
脳は谷を越えた
谷を越えて脳ははしる
血に追いつけないまま
脳を凋ませている

* *

置き換えられた枕に
良く似た顔のidol
かどみせのグレーヘアー
セブン・シスターズ
現実逃避は大好きなんですけど 銀化するんだよね
その通りですね全くその通りです
羽織り乍ら言う
そのようなことがあったとしてもひとつづつなくして
不義に顔を顰める
南洋の髪型に
緑を流す
水鳥の首
馬場はどうなっちゃったんだろう
あのやもめの子はどうなっただろう
軽天の時は飴玉を皆に分けていた
この体制での居住は一時的なものなのでリフォームしたりはしない
寝間違えたまま例えを使う
カイツブリだ
イボイノシシよ
進歩していない老人が
江戸っ子っぽい不完全さで
おしえをしろめる
山腹に点在するうつ伏せのマンゴー
目を閉じて階段を塗る
そこまで悪くなるのです
クビは簡単
タレ目で頷く良心
思ってもいない時刻
すでに火は点けられた
安全のうちに破棄してください

* *

蟻浴するカラス
大久保の夜空に雲
ルビが逃げていく
赤い蜘蛛の子らのように
赤い 引き潮
百人町の 喜久井の
約束の地に川はなく
知らない耕作法を学ばなければならなかった
4月後半から9月まで雨が降らなかったので
豊作を紐の字の主(バアル)的曖昧に縋った
東京の夏もいちばん長い日を前に天気の子に縋っていた
脳梗塞の前に
弱さとレインボーがタッグを組む
哲学は人の自然な願いに付け込んでいる

* *

さてその頃
一行目では彼が死んでいた
透析の血に脳が追いつかなかったのだ
見舞を仕舞った最期の日(八月六日)
数日前に見覚えのある、三つの棒のような入道雲を彼も描いていた
はんぶんインド人の孫たちが病室でそれに着色していた
りんごはごりんじゅうの祖父の顔を見て失神した
石鎚に雲は立つ
帰ってみれば
「サンダル下駄の感触が秋だった」

 
 

 

 

 

何をどのようにどれくらい〜漢字だけ読む

 

工藤冬里

 
 

三ヶ月は久し振りだった
背景は黒勝ちだった
耕運の歯ががしがしと笑気だった
富はフリーダイヤルに
触角で死化粧に勤しんでいた
度の強い子供
黒幕がある限り
白髪対眼鏡
望まれることを
しらす丼に
集い
水晶体に黒花火
七三哺乳
複雑にしないで焦点を
イントネーションに合わせないで
体全体は明るい
条件の良い挑戦
南予か
観葉百手
落雁のがしっと
尾崎
グラ歯
マツエク
首の輪
金のカレンに
トランスパラントな空色を塗り黄緑を塗り
漢字だけ読む
それが黄色懸かる
引き続き黒が勝っている
アフターからの取り戻し
しかし黒い
長浜は燕が沢山いたな
サバは保冷皿に貼り付いていた
高校は小さかった
最初は赤ではなく金色だった
マジックアワー
ブリックロードに影無く
何をどのようにどれくらい
暴虐の雲光を覆い
リュミエール兄弟
二十年でお別れ
若やぎ
クバリブレ
母音抜き
裕福
殺した後は何も出来ない
何をどのようにどれくらい
彼のゾーエーは彼へのもののあらわれからは結果しない
黒薄れ
黒薄れるな
ちゃん付けされる閉じこもりの黒
黒光り
今夜命は取り上げられる
嗄れ瓶
白とは偽善
知られるようになるのは偽善
時間を空間的に付け延ばすことは出来ない
瞼の裏で抽象

 
 

 

 

 

EINGANG

 

工藤冬里

 
 

どこから言葉を出してもいいわけだけれども
それをしないのは
それがロック史に抵触しないからだ
どの切断面にも洪水の記憶が残っていて
古い地層が衝き上げられている

切断面の中を歩き回るというのは
瑪瑙の中を動く虫のように出口がない
衝き上げる断層の動きを出口と錯覚して
抜け道を探すプロセスを抜け道そのものと錯覚しているだけだ

サウンドスケープ内には
カエルも居れば牛も居る
ミ・レドレミソミー
というメロディーを想い出したが
何の曲かは思い出せなかった

口頭

白く塗れば目立つが
墓は誰にも気付かれない
外側を作った者は内側も作った
内側は

汚れがはっきり見えない

目立たないことで 蹴つまずく

大葉の意義に
コリっと 木琴
嵌るのは六角形
仰け反ると増え過ぎる彩度

溺愛したので 逸れなかった
赤子は渡り廊下のカラス
低音の若造

溺愛

ワーゲンバスに
明確な一線を引く
低音で性を語る

EINGANG 入口

不安を感じる高音

Deaden your body members that on the earth as respects uncontrolled sexual passion

Deaden

サントーム(sinthome)
Sans toi ma mie、

幻想の機能不全。

サタンの妄想

享楽。象徴界から拒絶され、現実界に再出現した真理。ラカンは「白痴的な享楽の染み込んだシニフィアンの断片」をサントームと呼ぶ。

他者はいない。

「サントームを生き抜け」みたいな詩を書くと思ったら大間違いだ

書き込まれる

昔は赤ん坊が沢山いた

味噌汁の椀を覆(カヤ)す

入口が 出口だったのだ

 
 

 

 

 

分断の詩学

 

工藤冬里

 
 

病んでいるのでトイレに籠っていた
雨粒の付いた髪の毛が揺れる
一度切られた桐もまた伸びた
でも水をかけられているのはバオバブの木
二十年で言葉も変わってしまった
選挙当日
二十年で言葉も変わってしまった
世界は邪悪な者の配下にあるので
議会制民主主義など役に立たない
電子機器に気を散らされ
選挙当日
不法の者を未分化のままにして
選挙当日
分断の詩学
選挙当日
柔らげる努力はした
切断面は衝上断層を見るようで
選挙当日
差異ではなく切断面の看板を眺める
「衝上断層」
断層をとくと眺める
中生代が新生代を衝き上げている
まだ進化を信じているような人に何を言っても無駄だ
選挙当日
人の棲まない場所になる
選挙当日
助六型のトヨタシエンタの目が増えた令和
小スプーン一杯の表面のDNAで全ての思い出は生きているから
順ちゃんにはまた会えるよ
目は少し小さくなってるだろうけど
歌集 標野は作ってあげたかったな
つぎつぎに声がする
クリミナルのひとりだ
選挙当日
子どもは大人とは全く違う別の動物だ
美学にしたのには訳がある
近づく人を信頼できなくなるんだろ
選挙当日
「全部おまえのせいだ」
選挙当日
「これは二人だけの秘密だよ」
選挙当日
「きみの言うことなんかだれも信じてくれないよ」
選挙当日
「好きだったらこういうことをするんだ」
選挙当日
幸福の扉が閉じられたと思ってたら
別の扉が開く
桐のように
選挙当日
またボーダーを着てるのか
選挙当日
温められた菓子にはグッときたと思います
(What’s your business here, Elijah?)
ボーダーを着たパゾリーニ組の座員
選挙当日
創が深くなりづづけている

 

 

 

The abuser

 

工藤冬里

 
 

ほど遠く
1968の歌謡曲を組み合わせる
cell様の中に黒點
投票日に児童虐待をおこなった
小石や根の多い部分に行き当たる指先が
絶望を攀じるようだ
腰にずきん
革命からほど遠く
法律はぼくらを護る
蛍光マーカーのどんな色もフィットしない雨の日の
どんな声色も眉もフィットしない雨の日の
grossがsinを形容する様
愛からほど遠く
ほど遠く