オイル交換

 

工藤冬里

 
 

場所がなくなることなどどうでもいい
頬を掠める銃弾も
津波と野菜に比べたら小さい
ただ津波も野菜もヨモギとミントのスピリッツに比べたら小さい
世話する動植物を眺めてから
〈水田商店〉でオイル交換する
高い
高くなってる
でもどうでもいい
〈水田商店〉まで水は来るだろうか
インフラが止まって泣くだろう
いやだなあ
下草刈り
いやだなあ
大陸棚
いやだなあの微積をスクワットする
インフレが止まって円高となるだろう
頬を掠める銃弾にボーフラが涌く
今回はフィルターとエレメントも換えますか
〈いえ〉〈はい〉現金で
ブダペストでナマハゲそっくりの面〈が〉売ってた
ゴミの仕分けのように暗い明け方
すべての筋が緩むときに
水田の音楽が鳴る

https://youtu.be/XtdNdOTyHSo?feature=shared

 

 

#poetry #rock musician

bad news

 

工藤冬里

 
 

bad newsを嬉しさに利用されてbad news bad newsを私たちは呑む
good newsを撲滅するためならなんでもする
前座のフォーク野郎がフリージャズになって騒ぐ
それでは最後の曲です「星からの悪い知らせ」
黒いミルクに白いコーヒー
bad newsを嬉しさに利用されてbad news bad newsを私たちは呑む good newsを撲滅するためならなんでもする

 

 

#poetry #rock musician

イスタンブール

 

工藤冬里

 
 

最後の蛍、
非望の極みのようにしてきみは飛ぶ
あなたは優しすぎる
まだ間に合う
まだ間に合うと言い続ける
投獄の朝は突然来る
悪いことを行なわせないための投獄
良いことのために投獄されたのではない
晴れがましさを覆う詠唱のクルアーン

 

 

#poetry #rock musician

塩ブタ

 

工藤冬里

 
 

胸骨に点灯する自信超過の咳込む池の釣り人の、枠の中の服飾の自動的なギルティ
外され方に揺らぎがあり
独楽は止まるまで生きている
地に平和とドミートリィは叫んだ
布は裂け太陽は零れ落ちた
老人に知恵などない
何をしても喜ばれない
咳き込むだけだ
悪いことを止めるためにできることはあるだろうか
胸バラはとっくにベーコンになってしまった
蛍とも関係がある

 

 

#poetry #rock musician

津軽

 

工藤冬里

 
 

2週間の檻を待ち望む
その間に殺される
フェンネルを植える
祈れないことさえ知られてしまった
一瞬で喜びを奪われる
朝忘れている間だけ
咳で破られる
それから
青森ACACに行ったのはそれからだった
波打つ行線のデザインや丸ゴシックが伝えようとする身振りは
放棄と冒険のオデッセイア(グリークヨーグルトの腐敗した記憶)であり意味ではなかった
親がないので自分で名前を付けた
伝えようとするのは名前の意味であった
原付でリンゴ畑を周った
自分が賢いとは思わないというのは大切だ
水屋にリンゴがあり
逆流する用水路の警めがあった
強制され、逆さになってソファからずり落ちている
もう半袖の大人の季節だな
逆戻りも成長である
青森は思ったより白い
道路脇の斜面に続く紫の花々はショウジョウバカマというらしかった
(じょんがらは寒いから早弾きになったそうだ)
(中嶋 幸治さんのリンゴとツバメの墓の作品は良かった)
それから
松山に戻ってきて雨粒が腕に当たったのはそれからだった
酸ヶ湯で鏡を見たら石膏デッサンのラオコーンみたいに寸胴になってた(腹筋はないけど)
どうせやめるんだからもう止めた方がいい
そう思った
あと、詩は時系列じゃないといけないのか?
そうだよ
あと、詩のために電気風呂を犠牲にしてもいいのか?
そうだよ
そう思った
いやそうでもないか
そう思った

 

 

#poetry #rock musician

その町は

 

工藤冬里

 
 

その町は
青シャツで警備する
建物の周囲を一通り周ると
中に消える

与えられないし
受けてはいけない
鬱金に染まった石油由来の

思ってもみなかった嬉しい経験

毀れたロボットは枇杷色をしており
青梅はもう無かった
2種類あるcosmosの
敵対する方を工場としたので
蛍は消えた
太陽は闇に月は血に
雨は真っ直ぐ振り下ろされ
無数のバットが地を打ち叩いた
いつまでもジュラ紀の泰山木と
枇杷色ロボットは
透明なスライドショーによってラファに到達している
この黄色い手帳には
不作だった梅のみどりい記憶が書かれている

そして
雨が止むこと
空に手書き文字
泣き喚く危機

 

 

#poetry #rock musician

映画を見に行く普通の男

 

工藤冬里

 
 

今年の1本目は「running on empty」を見た。うーやんの映画を撮るなら先行するこれを避けて通ることは出来ない。因みにリバー・フェニックスは市川隼人に似ている。あと、カウリスマキの美はリベラルの臨界点というより潮解である。ジャームッシュのゾンビ映画と併置される時それは印章のように際立つ。
https://youtu.be/kDvqRVhQ9UU?si=HgZ8bJlmOUEavk6D

今年の1本目は「Nocturama」を見た。うーやんの映画を撮るなら先行するこれは避けて通りたいシドからブロンディに至る仮託できない実際の表層の必敗の現実のパンク史であり満たされることのない器としてのホームレスも絡め出入り自由だった百貨店での充実した妄想の過程とその果実の逆転を描き切った。
https://youtu.be/H-6EEsn3Akc?si=C9GZhz_4eZDRlbiJ

今年の1本目は「one false move」を見た。うーやんの映画を撮るなら避けて通れぬ差別の重層を風景に盛らなければ、つまり田舎者というコンプレックスと自分が白人だという居直りが共存するノワール仕立ての米帝の構造そのものが東アジア映画としては周到に転移転倒されていなければならないのだろう。
https://youtu.be/-3rH-x4LW3k?si=5nxrNZiWm3_a0hKO

今年の1本目は「pacifiction」を見た。うーやんの映画を撮るならオッティンガーのアル中女みたいにロックバーでカマンカマンと言いながら飲んでいるだけというのもいいなと思っていたので原爆実験の前にタヒチで飲んでいるだけという触れ込みのこの作品も筋より質感を重視するという点では同質だった。
https://youtu.be/CMrPRG3pTwE?si=Gkxdx8keiwYdJqL5

今年の1本目は「The Zone of Interest」を観た。うーやんの映画を撮るなら「それはあなたの関心領域ですよね?」の応酬にゼロから作るミカ・レヴィの外した音程を被せれば済むが「アウト・オブ・キリング」的な気付きは無意識の悪夢以外花や蜂からも遮断されており祖母の憎悪の方がまだましなのだった。
https://youtu.be/r-vfg3KkV54?si=4Ex4AnlamekVp0c3

桑の実がたくさん落ちて勿体無い

 

 

#poetry #rock musician

よくあること

 

工藤冬里

 
 

泥色の河岸の風景に崩し字の火災が興っている
繋がれた先の犬の色にズボンが当たっている
若布の海水浴場で遠泳を追う
独りで暮らす
巻く料理のように遅くまで碧い残照
電磁波が立っている
流しのステンのひんやり
蛍への虞に崩し字の若布が川を流れている
赤に染めてみる液晶
軸のように野菜
赤い御影石が光って
ジオラマの目線で
会話を始める
高いバンドエイドを買う
透けた角部屋の壁面に赤い崩し字が流れて
苗字がコロコロ変わるミイラ
折り込み広告に児童画

父親が悪魔だというのはよくあることだ

 

 

#poetry #rock musician