11月

 

工藤冬里

 
 

私たちはどのようにして生きているのかというと車のデザインを見せられて野獣や涙目の動向を見せられて生きているのです
あとはヴィノ・ノヴェッロで現在世界を読まされて生きているのです
絵画によって生きているのではありません
家族の物語によって生きているのでもありません

私たちは車の威圧によって生きているのです
あるいは舌の先の金属の味によって

草によってみどりを得ているのではなく
その生え方や生え際によって強迫されているだけなのです

枝ぶりは
なくならなければ自然とは言えません

光と影は
産道以外の意味で使われてはなりません

薬局が量販店になったのがいけなかったのです
それで松が死にました
子供たち、横断歩道を渡る時は首をかき切られないように気をつけてください!
車が、ナイフだからです
みどりはすべて図鑑の緑になってしまった
彩色を行う手がふるびてしまってもうどうしようもない

 
失敗と戦争の間につながりがあり
そのつながりは渦であり
渦は腐っている
腐った渦は失敗のビオから出て
巻き貝のペンダントは直ぐに千切られ
港の対岸の島はあまりにも近く
えりかさんの翼は滑走路をはみ出す
節目に生えるのが羽根なら
見落とし勝ちな歩行者を轢くのは
モーセの体を巡る論争の螺旋
注射針の痕に四角い絆創膏を貼って
ゆきさんはクジラの温さを盛り付け
源の安全も忘れて命を落とす
ディスプレイを磨いて死んで四日経つまで待つ

 
おもしろい夢
夢はおもしろい
きみはでてこない
きみってだれですか
きみじゃないよ
しにたい朝
朝はしにたい
きみのせいで
わたしのせいですか
きみじゃないよ
つめたい足
足はつめたい
しんだらもっとつめたくなった
ぼくの足ですか
きみの足だよ

 

 

 

切断線のある風景

 

工藤冬里

 
 

東温上空は川内の北方で8月から絵に描いたような偽の分断を仕掛けられている。その偽の分断に対してノーと言うこれもまた偽の左右勢力から「令和だ安全だ」という叫びが上がる時に真の切断が始まる。無気力にも音程があるとしたら無力そのものを一人サーバーに向かって吠えさせねばならない。

それを前にして表現における倫理なき切断は最早意味を持たない
プログレもtiktokも同じことだ
俺が、俺の身体が切断されるのだ
分かるか? 股から八つ裂きにされるのだ

なんの希望もなく、ただ八つ裂きにされるのだ
イカのように!
スメルジャコフならまだ良かった
これじゃスルメ雑魚フだ

糸電話が泣くのではなくて、糸が泣くだけなんだけれども、その糸は、ただの悔し涙にも反応するものなのか?だとしたら、俺の九四国フェリーのピアノで泣いたというOの涙も、そういうことだ。犬も食わない哀しみを抒情と呼ぶ乎。

犬も食わないから哀しみなのよと開き直るやつもいるが、その苦闘を鑑賞するなどというのは演者にとっては磁器やドルフィーと同じで地獄以外の何物でもない。

それにつけても、全てを敵に回す仕草の、なんと古びて陳腐なことか。そして、だからといって、世間の明け暮れは朝刊の字面のようにフォントとしては何も少しも変わりはしないのだ。

もうすぐ陽を浴びて皇帝ダリアが眼に沁みるだろう
そして僕は皇帝ダリアも皇帝ダリア飼育係も、と例年のように呟くだろう
鎌倉の近代文学館の庭の、被曝前の夢のなかのような写真も想い出すだろう
ブレていて、白い着物がゆうれいのように翻っていた
その幹は竹のようでよく伸びるので僕は恐ろしかった

作務衣を着た陶芸家の作務衣は妻が洗うのか?リベラルは消滅してそのコンテンツはジャンケンで陣営に分けられた。その分配、分捕り方には何らの倫理も働かなかった。分断は混乱のためだけに発想された。

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イギリスのローカルチャート
くらいの辺境
魚の顔して
モニターの背景の青の映り込みが違って
実体の方が沈んでいる
撫で肩の円熟が悪魔の思い上がりを語り
赤とオレンジは合わない
時間をパンのように割く
複雑に捕らわれそうになったら
慰める
痛みの最大の薬は理解
勤勉さと同程度の思考力が必要
管理人としてその能力を使う
dorcas in doldrum ドルイド
発進前に下顎を左右に動かす
土気色ゾンビ
画面映りでその気になった顔を円熟と呼ぶ乎
がぶり寄り荒勢
真ん中分け
なんで豚が主人公なんだ ああ豚にされたからか 最後は人間になるんだった
表情と内容が一致している
二本指 指は太い
ステレオタイプすぎて仮面に近づくくらい素面
三本指も太い
あるときは父親のように
あるときは母親のように
薄すぎて本当
上半身アニメ
家族のように親しくなる
と言い切った
土気色の魚
死んだ目の優しさとは何だろう
顔の筋肉だろうか
豚の鼻の孔
鸚䳇
蒲鉾型の赤味を帯びたトンネルが想像界を貫いている
フクロウ!!
タイとハンカチの柄を合わせ
頭を上げて
角度がモアイ
勇気を絞って と言った
最後までサイコパス
父と娘の絆が
赤味がかったトンネルの
想像界の花道を出てゆく
みみずく!!
トレーナーが限界を引き上げてくれる
二重瞼の給水所
下の歯が見える人種
どこから来ましたか
笑っている
笑えている
本心なのだろう
六角とか八角とか
何によって定められるのだろう
今は九角以上あるな
愛はあるものを喜び あるものを喜ばない
ということは 愛は何かを見分ける助けになる
感情の真を導きとするのではない
ぼたん系とオレンジ系は合わないのに
愛は覆う
直射日光から
愛は原則に基づく意思決定である故に
あなたは嵐のように彼らを襲う (俺以外の左右上下全てが、嵐のように俺を襲うだろう)
なめくじ姉妹
偽りの安心感を抱かせる
ずっと目を見ている
目だけを見ている
額に穴
胃や腸ではない体の周縁に話しかけている
私たちはもう子供であってはならず,波にもまれるかのように翻弄されたり,風に吹かれるかのようにさまざまな教えに振り回されたりしてはなりません。人に欺かれたり,ずる賢いたくらみに乗せられたりしてはならないのです。
法は力を吹き込む (九条は人に力を吹き込まないことを僕は知っている。その一点で俺はリベラルから切断されるだろう。)
腐敗の要素が全くないエチレンガスを放出
体の各部が共同し合う
総力戦の時となりました
心のドアは内側しかノブが付いてない
全開にして全体像を見ないと進まない
炎は小さく調整できない
消極的な見方は炎を消してしまう冷水でしかない
背広の肩のラインに 切断がある
多くの男性は
愛されることよりも敬意を払われることを望む
赤ん坊の泣き声が
蚊のように耳の後ろに上った

 

 

 

洞門行

 

工藤冬里

 
 

辻の気狂い
ただの行き違い
吉祥寺の頃から

体の中に茶筒があって
捻ると音がする

溝(ドブ)の黒
収穫は終わった
セメンの中の果実色した宝石
こげ茶のN/
納得できない事柄を考え続けるより
目の前の物を楽しむほうが良い
うずら
こわばり

 

 

 

逃げ足の速い静止した時間の瞬間移動の白黒

 

工藤冬里

 
 

頭から食べられるので
目を開けていられないほど疲れて
大陸は唐揚げに靡いていた
しっとりした眠気のなかで
犬の顔した肌が続いていた
焦げた皮膚は中身を覆い
足をとっ払いながら
椅子はよろめかないで歩いていく
すっかり安倍川に
よろめかずに歩いていく
いや歩いていたのではない
時間の経つままそこに立っていただけだ
草色の直線が引かれれば
椅子をさらにドミネイトできるだろう
逃げ足の速さは瞬間移動並みのマシーン
で検索すると
クレーターがあった
やすみなく働いていた肌だ
名前には肌がある
肌のない人が居るが
ギ酸エチルの焼けたような甘いにおいがして
宇宙にも洞門のあることが分かる
いい人なので分からせてあげて下さい
ため池なので声は
堰は皮で出来ていて
ドミネイトする夜の店の外
暗闇は宇宙に繋がっていて
クレーターの記憶を指でなぞっている
香港で生まれたこんな目立たない私でも
パンと叩いたスリッパの下には何もない
逃げ足の速い静止した時間
潰瘍をなめる清掃動物は
大きな変化を感じる
それは金属の溶接の煙の味であった
皮膚を破って声がして
世界には木のない赤土が拡がっていて
皮膚を被って声色を変え乍ら死や復活の劇に
使われている
髪は頭から生え
その下へ毛のない皮膚が
拡がっている
目を瞑って静止の瞬間移動をしようとすると
五角形だ
そんな気がする
デザインに目を向けると
緑も黄もなく
さまざまな灰だ
谷が欠けている 欲

互いに行き来できない
深い谷がある

もうすぐ僕は書けなくなるだろう
もうすぐ僕は歌わなくなるだろう
もうすぐ僕は笑わなくなるのだろう
僕はもう泣きもしなくなるのだろう
生きながら葬られ
墓の中から口ずさむだろう
絶望に旋律があるなら
それが最後の歌になるだろう

谷を飛行機が走っている
うすくらがりの谷を
セキレイのように
窓から漏れる暖色はともしびのようだ
あの人は燃えるたいまつflaming torchでした
偉大なクリエイター בּ֣וֹרְאֶ֔יךָボーレエイカー
譜面のように刻まれている
泣く糸電話

感情 ではない。糸が泣くだけなのだ
さらなる災厄をもって災厄を乗り越えてゆく
世界一高い木はハイペリオンと呼ばれるセコイア
世界一太い木はエル・トゥーレと呼ばれる杉
世界一成長の速いのは竹 一日で一メートル以上伸びることがある
三万 魚
一万 鳥
百万 昆虫
タコの頭が長い
羽が生えちゃって困る
ハエが止まって動かない
力は天蓋の形をしている
白か黒か
二進法で進む
それは光と大いに関係がある
タコの頭から下の動きで
白黒で進む

 

 

 

stray sheep

 

工藤冬里

 
 

三四郎は感嘆した
そこまで心を広げることができるとは
心臓がどきどきして苦しい
八つ裂きに遭うまでの命だが
茶色いアジアが広がってゆく
土塗れのモオヴよ
司書を目指す
胡座の十代
映画は黄色い肉が引き攣っている
丘の腹に墓地がある
黒い背広は着ない
爪先のクリーム色
嵐ヶ丘で引き千切る
セの発音の群青の空
胡座の十代の声
平行線をつけ足すことで絵にする
伏せた傘の手の切れそうなエッジ
乳白の青が帯となっている
がしっと植えられた木が今
金も内臓も場所は決められている
手伝ってくれる動物がいない
私は憎まれる
グリス塗れの球がシャフトのベアリングに詰まって黒い

 

 

 

ABOUND

 

工藤冬里

 
 

 

散文的な夜に
散文的な夜には
話し掛けてくる逆光の輪郭はずれ
冒した過ちは
原始的な蓋の容れ物に三角に押し込む
声を大きくすると
秘密を真珠にして

一喜一憂するふたつの管
が水平に下りてゆく黒暗
水平なのに下りてゆく気がするのは
耕作地の向こうが闇だからだ
発音を何度も聴き
神はふたりだけ
流れ込む(merge)支流が行き場を失って溢れた
名前年齢身長服の特徴
水槽の脇で
地元を案内
白黒の鞘入り乱れ
玉蜀黍を思わせる
穴は上昇する
河床勾配は5/1000
湿った灰水色
rover時代のmini
スバルN360を大事に乗っていたら
蛾の服に穴はない
邪悪な天使
ある人は怒るかもしれません
あなたの神は偽の神
光る竹観たすぎ
嫌らしい和風
祭りと祭りを合わせ
穴と穴を合わせる
篤い人
LGBTのガスボンベを交換
旅を良いものにしてくれる筈
本当かどうかは
付いて行かねばわからない
その辺を二つ穴から考えてゆくことにいたしましょう
門構えの形をした門が見える
視線の歩むべき道を教える
秘密を明らかにする
友情について
愛の壮大
一時的に間違った
失われたカ行の発音
さらに愛情深い
父親
オレンジnaranjaの車
書き順を逆に 寄り添う
蒔くと鳥の群れ
ミトコンドリア型錠剤
抉れた左部分が光っている
実際に崇拝されている神はふたり
像 帽子
世とは
ふたりの銀座
本流支流どちらかを選べ
ふたつの管を逆上る
美雨はしゃあしゃあ
抜け殻に本体の蝉の響
釈放されてもすぐに去るのではなかった
ABOUND
掴め
ただ持つんじゃなくて掴め
keep a tight grip
in the word of life
let your love abound
in the hard rain
abound with this hard rain
knowing I ran in vain
or worked hard in vain
be flawless
in the hard rain
knowing that I have run in vain
or worked hard in vain
be flowless
有機体の内部では痒みは
とどめられるどころか
かえって広まっている
be flowless
in the word of this organism
in this flow
river flows
through this organism

 

 

 

あらゆる希望を超えて待ち望む *

 

工藤冬里

 
 

タイムウィンドというよりウィンドタイムだ
風が時間を洗っている

風は時間よりも爽やかだ
内臓の岩に吹く
プレハブのモルタルの現在
フルートの管の中を
痛みを運ぶ
空白空0電気にのせて
翼は鏡に刺さり
ヨブはあたらしい陶片を手に取る


ぼくはもう何も期待していなかったし、期待できることは何もないと重々承知していた、現状に関するぼくの分析は完全で確実に思えた。人間の精神には知られていない領域があり、それはあまり開拓されていないからだ、幸いにもその領域を探索する羽目になる人は少なく、その作業を行った人は十分な理性を持たないがゆえに、これなら分かるという描写には至れないのだ。そのゾーンには、実際に思い出せる限りただ一つの表現、「あらゆる希望を超えて待ち望む」という、逆説的で不条理な表現を使うことでしか近づくことができない。それは夜と同義ではない、さらに悪い。そして、個人的に経験はないものの、実際、真の夜、半年続く極夜の中でも、太陽のイメージや思い出は残るのではという気がした。ぼくは終わりのない夜に入りこんでいたが、それでいながら、自分の憶測に何かが残っていた、希望と言っては言い過ぎの、不確実性とでもいうべき何かが。同様に、個人的に勝負に負けて、最後のカードまで出してしまっても、ある人たちにはーあくまでも全員にではないがー天で何かがもう一度状況を作り直し、新しいカードを恣意的に配分してくれて、もう一度サイコロを振り直してくれるという気持ちが残っている。神などというものの介入や存在さえ人生で一度も感じはせず、自分に好意的な神の采配に特に特に値しないと感じていても、そして自分が人生を構築する上で限りなく過ちを重ねてきたとみなし、誰よりもそのような采配を受けるに足らないと気がついていても。
ウェルベック「セロトニン」関口涼子訳

三番町のSAORI皮膚科で
処方されたジェネリックのステロイドのお陰で
眠気という采配を受ける

風は
臍にまで達する
血に至るまで抵抗したことのない胎児には
もどれませんよといわんばかりに

 

 

 

愛の計量化の試み

 

工藤冬里

 
 

目を閉じて
色を思い描こうとするが
●目を閉じると
●マチエールは思い描けるが
色を思い描
色は思い描けなかった
色は思い浮かばなかった
●色を思い浮かべることはできなかった
●目を閉じると
●色は記号化されていた
目を閉じると
色は思い描けなかった
脳内に言語として貼り付けられているだけのように思われた

目を閉じて
色をひとつひとつ
ひとつひとつ色を思い浮かべようとしたが
目を閉じると
色を思い浮か
色は思い浮かばなかった
目を閉じると
色は記号化されていた
色は言語
色は記号化されている
目を閉じれば
色は記号化されている
●瞼を閉じれば
●色はただ記号なのであった
目を閉じれば
色はただ記号
目を閉じると
色は
瞼を閉じれば
色は記号化されていることがわかる
色は目
色は
脳に貼り付けられている
瞼を閉じれば分かることだが
色は
脳に貼り付けられた言語である
なぜ放置されていたのか
色も折れるのか
気持ちが沈んでいるのではないか
どうしたいと思っているのか
再建させてください
家は荒れているんです
壁の色を思い描けない
焼かれたままになっているのに
見たことのない輪郭に色はない
そのオブジェに色をつけることは出来る
ただそれよりも
瞼の裏の残光が強い
記号は光ではないからだ
弁当箱の昆布の佃煮のような声だったから
黒だが
前にもこんなことがあった
記録はスマホで

空白空白空0

また同じ場所

また同じ場所で
上と下に伸びて行く
根も実もないが
手負いの獣のように
宙空に出現する

空白空白空0

考えに高低があること
天と地ほどに差があるということ
傷付いたので言う
何種類の昆虫を見たか
感覚の拡張
光に縁取られた葉
太い線でうちそとを分けるタイプの
薄い色のマシン
犠牲で測る大きさ
考えに高低があるように
愛は計量化される
撫肩の威厳
すべての撫肩の威厳よ
すべての役割語の語尾よ
鉤括弧の外の句点 中の句点
髪の毛の数と色
雀は地面に落ちる
落ちるように降りる
十万本
数える
ユダの長所
字が綺麗
ぶしゅぶしゅと世の空気が入った巨躯
心を大小で計量する
血管の膨らみ
人によって異なる川
川が踵を返して青く逆流してくる
つまらなかった
トキ
遅れ
早まり
金土
頭の形で国を識別
SFの映像
ユキは脆い石像のようだ
両生類の声
錦帯橋の堅牢
筆致にも高低がある
太い線細い線 赤
両生類と思っていたが ハギ
畑に耳を植える
威厳というソース
血管
カーテン
白粉(おしろい)
胴回り
城門
信頼
手の窪み
白い鞘の中に寝そべる

濁った海水
釣り上げる
赤い下地こわい
細い木目
弱い
91
35
きらいだけれども幸福
汚れ仕事
黒が濃すぎる
ていうか 浮いてる

きらいだけれどもたのしむ
信頼を計量化できるか
名前の移行は緩やかに行われた
母は百五歳

 

 

 

裏返った初夏の凄惨

 

工藤冬里

 
 

こんなに晴れた秋の日なのに
空から毒が降ってくる
命は
捨てようとすれば近づき
遠ざかろうとしてしがみ付く
証拠とは見えないもの
維持するためだけのものではないデザイン
毒味してみてよと言われて
飲んでみせる
治ったり解決したりはしない
母の死んだ子の 襟が直角に交わってめいろのようだ
黒い扇形が
地形を均す
オレンジジュースが 暴れる
ブルドーザーの頬に板を充て
はつかり号にする
心に納めていた
山吹がかった丸
ディスプレイに段の畑の波が拡がる
濃い緑が頬に垂れ
その層から塩が流れ出してしまう
左手に剣
左手を突き上げる
裏返った初夏の凄惨
マスコミと云わなくなった
七一歳の顔を見る
放射線をかわすとオーロラになる
DNAとRNA タンパク質
私達は家と工場を往復している
設計図をコピーしパーツとしてのタンパク質を組み立てる
私にだけ支えがない
ばさばさと論証する
結末をしっかり予告する
蜂のような うなり声がする
水の浄化のデザインを知った人は
警告を受ける
そのルールと力、
繊細さと複雑さ、
によって警告を受ける
知識人から注意深く隠す
黄や茶色から
経穴から胃に来る
髭を剃る時のオレンジの明彩の変化
団塊の鼻息としての外向
イエローの分配、
初夏の裏返しの紫の凄惨
薄緑や青の中に
オレンジの

せいぜいがカートゥーン色

 

 

 

holy sunameri moters

 

工藤冬里

 
 

-1.先週までのあらすじ(ネタバレ)

人生のアーカイブ化を図るK(60)は、文壇もとい分断された詩の場所を統合しようとして失調し、ウィーン分離派があるなら日本分離派はないのか、などと呟きながら財布ごと銀歯を失くした呂律の回らぬ頭で反メルキゼデクを妄想する。空港近くで避難警報を受信するが、町の避難訓練だと分かると宙吊りにされたままビッグコミックオリジナル9月20日号佐藤まさあき「夕映えの丘に」再掲を読み、モノクロームの線が赤より赤いことに驚く。遠藤水城の満を持したアイトレ文に刺激され、「痺れるような柔和さと燦めくような分かり易さで諸体制の延命を図る頭脳らの世俗性を俺は拒否する/体制に延命など要らぬ/今滅びろ」とツイートする。青い朝顔の、午前中だけ続くその栄光を活ける。ブレードランナー2049を観、未来はなく過去を変えることでしか今の栄光はない、との思いを強くする。三万いくら入っていた財布を運転免許やカード類と共に失くし、タイヤをパンクさせられ、映画館駐車場の側溝に落ちて左大腿骨を強打し、巣立後のオスの足長蜂にまで刺され、身分証明にと持ち出したパスポートまで失くした状態は、自分が地雷として愛を定義してしまったことに因る彼方側からの攻撃と信じ込むが、金を拾うなどのいくつかの不幸中の幸いとでも呼べる出来事があり、幸福とは不幸度7に対して3くらいの割合で生じてゆくものだなどという間違った人生哲学を開陳するまでになり、止揚を相殺と訳すノヴァーリス、偶然と悪霊が殺し合うのか、などと分断/統合の結末を呪いながら、切れた筋肉に絆創膏を貼って灰に赤い糸の混じった眠りに就くのだった。

 

0.創(キズ)

目覚めれば満身創痍と分かるだろうきずをつくると書いて創造
絆創膏剥がす速度を速めればきずなのきずは一瞬で済む

顔の上で
金八先生のようなことを打っているうちに
また寝てしまい
緩んだ手から眉間に降ってきてさらにベッドの
下の硬い床に落ちました
慢心創痍工夫

 

1.次の日

チャンジャ高かった?
よく見れば灰とピンクでアルトーぽい
白にも色々あるね
車を選ばされる社会
先生 トイレに行っていいですか
と言えず池田さんの足の周りに水たまりが広がっていった
過去を変えるだけのヒーロー
文字を立体にするだけの落書きが
後の映画のエンブレムになろうとは
レプリカントの血のように
弁当のチャンジャ
国分寺の坂を下った
深夜もやっている定食屋で
若い人達はチキンカツ定食を食べていた
そこでチャンジャを見つけた時は嬉しかった
幕の奥に振りかける
イエス、幕は肉体である
故意の恋の罪に犠牲は残されていない
最後から二番目のセミがまた啼き出した
背広は袖が狭くて手首が入らない
どうしても死が必要である
代わりの血で契約を
地平線近くで興ると雄大に見える
濁点は付けないでくれ
おしゃれ泥棒
心に置き頭に書く 法律
撓垂れた観葉植物
拓輝は ひろき と読むのか
みんな親に似てるなあ
親の親を五十代くらい遡れば
もっとトマトやキュウリが出来るだろう
地上に建てるものではない
前に話したじゃないですかー
ここで眠くなっちゃった
インタビュイーはこたつの中で髪を七三に分ける
次の日を心配しなくていい
次の日はない
次の日を末席に坐らせる
私は次の日である
過去が、次の日なのである
声たちが、席に着いている
次の日は招待されたが断った
駄菓子屋のような風が吹いている
露地や小径に行き、誰でもいいから無理にでも連れて来なさい
笑ってない

 

2.居酒屋「ラッキー」にて

いっぺん病気でもせんとこりゃ無理やな
でもこれは所詮にんげんのものがたりだ
なんてこった
柿の実が俺に当たる

 

3.すっからかん節

すっからかん
すっからかん
ジャック・ラカンもすっからかん
五百羅漢もすっからかん
次の日はない
妄想の中で過去を変えることの中にしか
希望はない

 

4.敵の土地で朽ち果てる

告別の間僕は眠っていた
言葉は洞門の内壁を伝い
上流に抜けていた
認知が完全に進んだ時
司会者が町にやってきた
鳥籠を持って
羽が生えるのではない
羽で覆われるだけなのだ
今はセメントが居留地を覆っている
黝ずんで、SFのセットのようだ
破戒的な疫病が蔓延し
竹冠と草冠を取り払った剝き出し
真昼の決鬭から門構えを取り払うとどうなる
災厄がテントに及ぶことのないためには
鳥籠を避けなければならない
上流で言葉は禁令という石に打ち付けられる
正面から攻撃してくるのはライオンとコブラ
禁止の報せを帯びたディスプレイは青味がかっていて
迫害自慢の目隠しを外せば
吹き抜けの夜空が見通せる
手を並べ小さい恐龍と大きい恐龍、と言う
蓋を開けてみれば、
あるいは蓋から草冠を取り去ると、
私達は石のように笑っていなければならなかった

私は敵の土地で,生き残る人たちの心を絶望で満たす。彼らは,吹き散らされる木の葉の音に追い立てられ,誰も追い掛けていないのに,剣から逃げる人のように逃げて倒れる。誰も追い掛けていないのに,剣から逃げる人のように互いにつまずく。敵に抵抗することができない。 国々で死に,敵の土地で息絶える。(lev26:36-8)

荷を負い、外国に引っ越すべきか
隠し場所を決める
口籠で守る
口籠から竹冠を取り外すと
詩は用語を変えて
分裂したパーティーは長く続かない
牛乳パックの絵のように
或いは夏ツバキの幹のジグソーパズルのようにして
嫉妬を克服した
バレエの骸骨
追うマンガ
敵の土地で朽ち果てる (lev26:39)

 

5.共鳴しない秋の歌

君がいるのはいけないことだ
と歌う声がカーラジオから流れてきて
ぎょっとした
なやみつかれてまちのなか
と続いた
草野さんの声だということは
その頃にはわかっていた
検索すると
悩み疲れた今日もまた
だった
研究?している人もいて
カレーという語が出てくるのは
エンケンへのリスペクトだ、
ということだった

 

6.道連れ

死ぬ死ぬと言わせ
それはこういうことかと言わせ
受け身を加速させ
道連れの豚の群れに
ひこうき雲を聴かせて
食べられない体にしてから殺す
せめて食べてくれればいいのに
分かりました
フェストフード店に
言っておきます
あなたを食べた生き物を出しましょう
ありがとう
それでこそ政治家だ
どういたしまして
それがアジェンダとしてファーストですから
ああ
何とかの何とかが第一てやつのことですね
ありがとうありがとう
では一緒に歌いましょう
ごりん ごりん ごりん
りんごはごりんじゅう
じゆうなりんご
りんごは捥がれた
ところで
移動を禁じられるとは思ってませんでした
江戸時代はそうだったのは知っています
りんごは
自転車でモールに行き
百均で働いているだけですから
いいんですけど
農協も忙しくて
頼んでも田植えに来てくれないので
ふしぎな単一の植物がひょろひょろ伸びて
メキシコのさばくのようです
一度行ったことがあります
国境付近でした
UFOしか観光資源がない町という触れ込みで
プラダが店出してました
砂漠の真ん中にぽつんとプラダ
プラザ合意って知ってますか
留学したのはその前です
気分は田中英光でした
その頃は連絡船の出航用に紙テープが売られていました
海に色が溶けて
汚染といえば汚染でしたが
分かりやすい汚染でした
私企業とか紙テープとか
ウカマウがよくやる、
責を負うのは誰それであるという
分かりやすいターゲット設定の快感
それが今は
マリオネットだから
マリーアントワネット
ネットのマリオ
マリというオネエ
デラックスなターゲットだねえ
キンに目を向けさせる
キンのマネー
マネ菌

禁令下の
ジャーマネ
ゴダール曰く
いまや蚊の方が真剣だ
道連れで壁という曲を思い出したんですけど、元の詩は
たくさんのかべ
たくさんのおり
たくさんのろうや
それがくずれるとき
わたしの体も破裂するのだ
花をつめ
花をつめ
うつくしい花
すぐにくさってしまう
うつくしい花
という、シュトゥルム・ウント・ドラングの詩人レンツの影響下にあった礼子によるロマン主義的なものでした。初演は椎名町消しゴム画廊、角谷と礼子と僕の三人でした。その数年後に出たピナコテカ盤の、道連れのキクノハナ、という歌詞は、欠落を埋める気質のある攝が忖度して付け加えたものです。崖から飛び込む道連れはいいからきみはもう独りで歌え。

 

7.エンドロール

財布は戻り、事件は解決した。しかしKの胸にはいつまでも消えない重苦しさが残った。

「あの、俺さあ、もう詩人刑事やめようと思うんだ。所詮俺の居場所なんてなかったんだ、ってね。」
「それな」
「・・・」

 
 

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