小関千恵
宇
宙
が
こ
こ
ま
で
降
り
て
き
ま
す
よ
う
に
雲の中に扉が見えたのは
やっぱり一人で歩きはじめたときだった
ああ 詩も涙もない
無くなってしまったんだ
あんなにひともじづつ 浮かんでいたのに
かたちに身を寄せてはみな蒸発していく
ひかりにひかりはぶつけられ
だれかの大切なすまほも割れていくね
ひとりひとりの月が宿る液晶は粉々に砕けて
それでも月は これでもかと
破片のままでも愛しているのだから
いつのまにか
詩も涙も無くなって 水平線へ辿り着く
ひとりで歩きたかったんだ
ホワイトグレーの空と海の間を
ひかるたくさんの魚が飛んでいた
すまほの電池は切れている
宇宙がここまで降りてくる
呼吸をくりかえす
海の香りはつめたくとおく
なんだ向こうにはまだ
島があるんだ