原田淳子
あれは雨ですか
いいえ あれは炎です
不在の手紙を山羊が燃やしたのです
立ち上がる火柱は水の姿をかえた
野葡萄の海いろ
花に触れぬ蜘蛛の群青
青ざめた右下がりの文字
永遠に別れた緑
毒か、薬か
涙か、河か
嘘できれいなものと
泥でうつくしいものを交換する
貨幣は空まわる
贈与なんて、きれいすぎる
家を失くして
すべての地が庭となった
服は遺された譜
曝されたポケット
落とされた実は必ず拾う
拐かす蛇すらいない
苦さを頬ばる
夜ばかり描いているのは
朝がきてほしいから
夜にいるゆめを
朝につれてゆきたいから