更年期の雪

 

正山千夏

 
 

無音の部屋にいる
今日は寒いから出たくない
時計の針の音が嫌い
二重サッシはありがたい

無言の自分がいる
正面から見据えてみる
オトナの社交辞令が嫌い
最近のインナーはあったかい

あったかインナーを脱がしてみれば
痩せ細った私の体が
冬の枝木みたいに震えてる
そうやって越冬していく

更年期の雪が降る
うっすらと雪化粧
それとも霜
もっとゆっくりと忍び寄る劣化

これまでだって
時計はそこにあったはずなのに
いつから針の音が嫌いになったのか
思い出すことができない

更年期の雪が降る
吹きっ晒しの私の脳みそが
うっすらと雪化粧
それは今日の空のような灰色だ

 

 

 

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