小さな
旅から
帰ってきた
女と犬が迎えてくれた
旅では
生きてるうちに見られなかった夢を **
聴いた
竹田さんが
嗚咽するのをみた
それから
荒井くんと
吾妻橋藪で蕎麦を食べた
夕方
村岡由梨さんのイデアという映画をみた
ひかりがあり
そのひかりを問う映画だった
肉体の
牢獄からひかりをみたのだろう
死のレッスンはまだつづけなければならない
それから
山形訛りの男たちと会った
男は
村では
赤だと言われたのだろう
上原では
詩人たちの詩を聴いた
詩はあなたとわたしの間にある
詩はあなたとわたしの間にある
魚群も鳥の群れもクラゲのように窄んで開く *
窄んで開く *
ことばで
語れないこともある
背黒イワシの群れが
海面を真っ黒に染めるのを小舟から見たことがある
浜辺でカモメたちが空中に浮かんで停止するのを見たことがある
語れない林のなかに
紅い山茶花の花がひらいている
* 工藤冬里の詩「海抜ゼロ」からの引用
** A-Musikの曲「生きてるうちに見られなかった夢を」