原田淳子
それは毒だから噛んではだめよ
と母は体温計をわたしにあてた
毒で熱を測るなんてどうかしてる
幼ごころは昂って
毒を噛みたくなる衝動に
銀いろの毒はするする滑り
角度をかえて明滅した
秘すれば秘するほど
熱は膨れ
熟した果実は崩れて
銀を光らせた
淋しさは花束にくるみ
壁のない部屋を照らすために月を飾った
膨らみつづけた銀の決壊は
懐かしい音楽に似ていた
唇にherpes
helpless
露わになる幼き身体
鏡に映る水銀柱
そこに
花束をかかえたわたしの毒が
世界に ただひとり
銀いろに濡れて立っていた