ゆきのあとに

 

峯澤典子

 
 

あさ 目覚めるまえの
窓辺に
小鳥たちが
濡れた花を落としていったから

ながいあいだ 会えなかったひとが
今日
そらを 渡っていったのだと わかる

交わしたことばよりも
交わせなかったことばは
ゆきに覆われた木の実のように
青いまま 残るから

夢のなかの
かじかんだ つまさきでも
さがせることも

あのひとは 聞こえない声で

さよなら と 言ったのか
おいで と 言ったのか

いつか
わたしも
ながい夢からさめ
そらを 渡りはじめる夜明けに

待ちわびた ゆきどけの窓辺で

ずっとさがしていた
青いままの ことばは
はじめて ささやく

さよなら
そして

おかえりなさい と

 

 

 

ゆきのあとに」への2件のフィードバック

  1. 長田典子さま
    コメントをいただいていたのに気がつかず、大変失礼いたしました。
    お読みくださり、そんなふうに感じていただき、とてもうれしく、感謝いたします。
    ありがとうございます。

峯澤典子 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です