春宵三篇

 

佐々木 眞

 
 

人類滅亡まで終末時計残り100秒

 

「人類滅亡まで終末時計残り100秒」の声を聞いて、
こんな詩が出来た。

料理は、できない。
車の運転は、できない。
確定申告は、できない。
停電になると、どうしていいかわからない。
テニスは、できない。
仕事は、できない。
暗算は、できない。
外国語は、しゃべれない。
封は切れずに、指を切る。
缶詰は、開けられない。
スマホは、使えない。
古稀を過ぎ、ウインドウズが10になっても、捉音が打てない。
「ウっ」「グっ」「げっゲゲッ」「ぐっぐわッッ」

人類滅亡まで終末時計残り100秒
おらっち、人類滅亡残り3秒辺りまで粘りに粘って、
ゆっくり、ゆっくり、死んでいきたいな。

 

 

電光影裏に春風を斬る

 

一の太刀

少女が「大変、大変、大変よお」と叫んでいるので、
見に行くと、赤坂が、乃木坂と欅坂を、むしゃむしゃ喰うていた。

少年が「大変、大変、大変だお」と叫んでいるので、
見に行くと、赤坂を歩いていたキツネ、クジャク、オオカミ、ハクビシンを、
ヒトが、むしゃむしゃ喰うていた。

おばさんが「大変、大変、大変だよ」と叫んでいるので、
見に行くと、キツネ、クジャク、オオカミ、ハクビシンを喰うたヒトが、ヒトビトをむしゃむ喰うていた。

おじさんが「大変、大変、大変じゃん」と叫んでいるので、
見に行くと、ゴジラとキングコングが、ヒトビトをむしゃむしゃ喰うていたので、驚いた。

 

二の太刀

コウ君が「プールがプールを食べていますよ」というので、
見に行ったら、3月で閉鎖になるはずの栄プールを、
港南台プールが、がぶがぶ呑んでいた。

しばらく眺めていると、
その港南台プールを、
としまえんプールが、がぶがぶ呑んでいた。

ややあって、
ハリー・ポッターが、
としまえんプールを、がぶがぶ呑んでいた。

そんでもって、
クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が、
ハリー・ポッターを、がぶがぶ呑んでいた。

それでどうなったかというと、
クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号を、
トランプと安倍蚤糞が、がぶがぶ呑んでいたので、また驚いた。

 

 

世の中みんな、障ぐわい者

 

ぐわあい、ぐわあい、障ぐわい者
世の中みんな、障ぐわい者
健常者なんて、一人もいない

目が見えない人 手足がない人、
聞こえていても、しゃべれない人
名前を呼ばれても、微動だにしない、できない人

遺伝子に異常がある人、帯状疱疹で激痛が走る人
腰が痛くて歩けな人、頭の中が水だらけの人
ケガや病気でなくても、加齢で耳が遠くなった人

ガンのステージ4で、吐きながら抗がん剤を飲んでいる人
何の因果か新型コロナウイルスに感染して、死にかけている人
朝から晩まで身動きできずに、ベッドで垂れ流している人

生まれながらに障ぐわいのある人は、たくさんいるのよ
外から見ても、障ぐわいがあるかないか分からない人も、多いのよ
人はみな、歳をとれば、障ぐわい者になるのよ

だから、人はみな障ぐわい者
よしんば五体満足でも、きみがすんごく評価しているトランプはんのように
悪魔に魅入られて、狂気に取り憑かれた人もいるのよ

万が一、きみがまた街頭に躍り出て
障ぐわい者たちを、次々皆殺しにしたならば
地球の上には、誰もいなくなる

残ったのは、きみが一人
立派な純正健常者の、きみが一人
あんたが夢見た、理想の世界だ

ぐわい、ぐわい、障ぐわい者
世の中みんな、障ぐわい者
健常者なんて、一人もいない

 

 

 

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