工藤冬里
ユダの声色で
腑の出た魚
トリチウムの様(やう)に捨てられた旧神は剥(ムク)れる
千年花月
薄つぺらい写真で出来上がつてゐる菊人形状の身体から満月を剥がし
その欠落について補填するのなんの
減収のはなびらで装ひ
理由のある唯一の札を引くやうに
現実と永遠を重ねる
オートバイは失恋を吠え
罪のレセプターに給油する
その愛はリッター何兆円ですか
何かわるいことをしたのではないが質(むかはり)になつてねこの視線にまで入り込んだ
生き返らせるには写真アルシーヴの配列を変へるだけでいい
サイズでも作成日時でもなく人は名前で並べ
パオの中で火が燃え
ねこは内側に揺蕩(たゆた)ふ
外で繋がれてゐた人間はウヰルスのついた無酵母の煎餅様(やう)を食べた
とりわけ白茶けた一葉が抜き取られた
決して到達しない花月に向けて
ある種のマリン・ブルーを敷き詰めた部屋で
法律用語こそが最上等リアルだつた
それを知ることはそれを愛すること
その乖離に竦(スク)み
生き返つたねこの視線を骨組みとした天蓋の白を以て
いぬの目に降る花月に揺蕩へ
#poetry #rock musician