千年シネマズ

 

工藤冬里

 
 

過ぎ去り方が速くなった
名詞や個体ではなく思惟そのものが一コマで消える
文尾まで聞き進むうちに動詞が肯定だったか否定だったか忘れている
間違いだけが結び目を、
大河内伝次郎の言い損じが映画を形作る
欲求だけ考えて感染させる
カメラのパンのみによって生くるにあらず
zoomの踏み外しによって事故は自己になるのだ
巻き貝が喋る時口を窄める
不従順なシラー・ペルピアナと共にオオツルボが犯す同じ過ち
ジャン・ ルイ・シェフェールが喝破(カッパさん大丈夫かな)したように、私たちは映画を観ているのではない
じかに倫理に触れているのだ
千年の営林
自分で春の雨のなかの甘い父を二百回演じる
コロナは一時的なものに過ぎない
骸骨バレリーナも操られて立ち上がる
フィッグ・バーの枕木がコマを区切り
無花果の位置軸が移動している
ハグが語源と共に過ぎ去る
a film
with constant sorrow
掘れない鉱脈の瞬きの移動のなか
一瞬目にする井戸
記憶できない美しさ
当局からの勧めに従い
記憶しない
映画よ滅びる国に従え
人の命を守れと言われたら守れ
もうすぐ滅びるのだから従え
映画よ滅びぬ国に従え
自分の命を守るな
滅びないのだから従え
死者が演じる六千年のロック史を撮影せよ

 

 

 
#poetry #rock musician

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