工藤冬里
同性婚の家の子が、うちのお父さんは女です、
と言うので
それは話が合いますね、
実はわたしの親も、男でも女でもないんです、
と返してみる
親子を語るときだけ人は厳粛になれる
no joking official publicである
有線では、たいていビリー・ホリデイかモンクがかかっている
マル・ウォルドロンばかりかかかっていたこともある
そういうのを親だという人もいたけれど
そんなとき、言うほうも聞くほうもまじめだったのを思い出した
子はあなたのことを二百回おとうさんと呼んだ
あなたは男でも女でもないので
イエのアレゴリーは便宜上のものだったと知っている
それでも
それは唯一効果的な説得の仕方だった
いくら家庭内暴力で評判を弱めようとしても
終わりのときまで家族に対する思い入れの大枠は生き続けた
エディプスはそれだけ筆に乗せやすかった
それでわたしも
実はわたしの親も、男でも女でもないんです、
と返したのだ
家族が重要なのではない
その制度を使った比喩こそが実体のアルファ・オメガなのだ
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