はこのないウタ

 

小関千恵

 
 

トレモロの奥に‬
鏡があるみたいで‬
‪ずっと la Alhambra が鳴っている‬

‪思い出とは
今歩いて拾うこと
‪あの噴水の曲がり角に‬は
‪痛みも喜びも‬、幻も
今、落ちている

‪生きる場所を底辺と呼び
‪はこのないウタはどこまで運ばれていくのか

‪じかんは地震のように揺れて
‪音楽はいつだって 生まれた瞬間に
思い出だった
幻のように
良いのか悪いのか分からないまま
生まれたときほど 生まれたまま

幻のことを汚れだとロルカは言った
‪老夫婦のセヴィジャーナスが弾けている
真っ白な世界で

永遠に届かない
雨の下で

 

 

 

 

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