王国

 

原田淳子

 
 

 

夜は蝉たちの王国

噎せかえる闇
嗚咽する夏

‪19時、‬
コインパーキングのネオンサインは海を指す
汗まみれの腕
涙とおなじ辛さの泡

髪をほどいて波を歩く

暗闇をみると絵を描きたくなるのは
黒がまぶしいから

蝶を捕まえてみたら
口紅だった
久しぶりに化粧をして、踊った

朝の葉にぶらさがった亡骸
三日月形のゆりかご

水たまりに蹲る
白と黒のきみ

ゆりかごは
まだ微かに揺れている

波音のとどかぬ
貝の螺旋のおくのおくで祈る

どの光も途切れぬように
揺れつづけて

 

 

 

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