別れの不穏と悲しみとは

 

ヒヨコブタ

 
 

さようならをする準備を
させてはもらえない
今年はそんな年になった
身近なひとが幾人も旅立てばこころあわだち
荒波が押し寄せる
笑顔多きひとの印象は
悲しみでひとりの背中を想像させてくれもしない
一人一人に問いたい
あなたは
あなたはひとりだったのですか

去年の秋に発表された歌に希望をみた
その頃にはマスクだらけのこの世界はまだなかった
殺伐としたスーパーもなかった
他愛ない会話に満ちていたんだ
その秋にうまれた歌に
過去に救われたんだ
あなたはそうではなかったのですか

ひとの死を美化しているといわれたことがある
わたしは
口をあんぐりとさせてなにも言えなかった
ときに
話を通じさせあうことができればいいのに
できないひとも多いのだと知っている
わたしもひとりになる時間かもしれない

とある死
その人の死からその年齢の倍になったことに気がつく
わたしは未だにわからずにいる
あのときどれほど誰かとその人について語り合いたかったか
語り合い続けたかったか
20年
以上の日々ひとりで考えている
形見分けには多すぎるものはしまってしまった
生きてきた証という苦しみの塊も含まれた段ボール
なぜこんなに手放されたのだろう
わたしのもとで休んでいるといいのだけれど

ただ息をして息をし続けるということは
これほどまでに困難なことなのか
それだけは知っている
つもりだ
なぜなのかは
わからぬままに

生きていられる喜びというものは
脆くて危なっかしい
それが生き続けるために足りないときがある
魔の時間だ
そんなときは休もう
じぶんにも言い聞かせているのだ
そちらとこちらは近いようで
あまりに
遠いから

子どものころから願っているのに
まだ神様とやらはきいてくれない
届いていないのだろうか
もう誰も死なずにすみますように
お願いです
そんな日がありますようにと

今日も願う
もしも誰かに届くなら
このちっぽけなわたしの言葉でも
きいてくれやしませんか
あなたが大切です、どうかいなくならないでと

不穏な秋は
いらない
ともに空を見上げよう
どこかまで繋がっていると信じてみませんか

 

 

 

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