原田淳子
夜が
降りてくるあいだ
やわらかな毛並みに包まれていたい
夜は
いつも最後だから
きのうの夢に
束ねられないように寝返りをした
窓に毛布を押しあてて
隙間風を塞ぐ
缶詰めのなかで眠る
窓が白けて
指で描けるようになったら
冬
はぁっと吐く息に
一瞬
白薔薇が咲いた
掌にのせて
きみに、
ねぇ、ふゆそうびって
振りかえったら
わたしが消えた
朝になったから、
ゆかなきゃいかない
鍵はここにおいてゆく
窓はあけてゆくね
猫が通れるように
遠き炎に泡となり
汗と
涙の
塩の痕だけが残った
貝殻ひとつ
ここに
おいてゆく
おなじみちを迷った誰かの
北極星のかわりに