思い出す、彼女の

 

ヒヨコブタ

 
 

花が好きだった
そのひとから
時折届く葉書には
小さな押し花があった

決まった時刻にパンと
少しのスープを食べ
読書もかかさなかった

彼女のひとりという時々を
孤独に思うひともいたろう
わたしには
ゆたかな彼女が思い出されるのだ
ひとつひとつが丁寧で
少しのおしゃべりに笑顔になる

昨冬のこの頃に
まったくひとりで旅立った
幼い頃に編んでくれたセーターの色も温もりもまだ残したまま

かつて彼女がそうしたように
年の瀬わたしも台所で
少しずつの正月料理をゆっくり作る
こつこつと

どこかで重なる
どこかで思い出す
そのひとは
優しい寡黙なひとだったと

出汁や醤油の匂いのなかに
彼女を
みるような
年の瀬

今年ほどの忙しなさを
異質な日々を
彼女が知らなくて良かったと
それだけは

くつくつと煮たつ鍋のその湯気に

 

 

 

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