小関千恵
10年前の今日は、雪が降っていた
10年経った今日は、風が吹いている
猫は10歳、歳を取ったはず
わたしも10歳、歳を取ったはず
コーヒーを淹れている
同じ電動ミルを使い続けている
眩しさは同じように、
陽は日に差している
ずっと、同じ部屋に住んでいた
何処かを見つめている、わたしがいた
何処かを見つめていた、わたしがいる
浮かんでゆくクラムボン
あれはなんだ 不思議だったから、ついていった
いつか、わたしを閉じ込めて、
何処かへと連れさった、あのクラムボン
今、この場所から、
そのクラムボンを、大空に見ている
何処かを見つめながら、居なくなるわたしを、
かぷかぷわらう、クラムボンの中に見る
(死んだ?)
何度旅から帰っただろう
陽が差す 冷たい空気を抜けたあと
変わりようの無かったものたちが
なんも変わらんかったよ、って
教えながら、ほんの少し揺れていた
わたしは、
この部屋で何度も眠った