凍てつくあたたかい夜明け前

 

工藤冬里

 
 

起伏の中に嵌め込まれた白の像が輝き
風景は初期の油絵のように塗られている
詣でる人らの中のペパーミントのジャンパーが
ザクロの川を渡る
机が鋭角に描かれる
机にナッツの袋が重たい
結婚式のようなネクタイをして
ひたすら待つ
カーテンは重力に従って時間のように垂れているが
過去形の夫の癌は治らない
根こそぎ解決するえらい人たちはなぜセーラー服のようなマントを着ているのだろう
一兆円を超える金銀銅が寄付されたが
鰓はそのまま
今まで食べたサーモンたちの下顎のことを考える
頭が痛い
目を閉じるとフラフープが見える
半泥子の「あけぼの」のようだ
燃える黒い心臓
凍てつくあたたかい夜明け前だ

 

 

 

#poetry #rock musician

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