げんせ/こんじょう

 

薦田愛

 
 

もつれた糸がほどけない
ふがいない指のこわばる
おもうにまかせないというのは
このことか
じぶんの指であるのに
うっと
もりあがるつぶがこぼれる
しおからく

ねてもさめても
はなかんでも
こぼれて
しおからい
ままなので
のがれる
こんじょう
いな にちじょうを
ひざからくずれおちて
のがれる
めをふせて
そのひとはむくろをはこぶ
この
むくろを
みずからの
むくろひとつを
ひきずりおろし
のがれる

ゆれてぬれて
ねがえりをうつ
ひとひふたひ
めくれあがるささくれの
かわききるまでに
たりない
たりない
ひとなぬか

ゆれてぬれて
ふるえて
もんどりうつ
むくろ
みずからの
むくろを
むかえに
そのひとは
むくろひとつを
ひきずりおろした
ところに
きて
わらっているすこし
ああ
わらって
いい
げんせ
こんじょうだった
ここは

もつれた糸を
探りなおす
指のゆがみ
探りあてられない
あの
糸のわだかまり
ああ
からむことさえ
なかったのか
届いてさえ
ないのを
それとしらずに

ゆれてぬれて
ひとなぬか
果てて
しおからい
ほおをぬぐった
むくろをはこびいれる
いえ
(家)
そのふちに
こきみどりにあけの
はむれみっしり
くちなしの花びらが
ななえ八重
おもたげに
しろく
ふくらんでいる
むくろのうちにも
ながれいる
あまく
ぬりこめる
ああ
げんせ
こんじょうだ
ここは

 

 

 

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