もうすぐ誕生日がやってくる

 

今井義行

 
 

7月の半ばになると 誕生日が おとずれて わたしは 58歳に なる

「お誕生日おめでとう」とか「どうもありがとう」なんて やり取りをするのが 
苦手なので 生年月日は 非公開にしてある

還暦までに もう1回くらい 恋愛を してみたい なんて おもっても いる

病気に なって 会社を 解雇されて

わたしは 詩人に なりたかったので

ハローワークには 行かず 何回か アルバイトをした

(── それが どうした?)
(── それが どうした?)

わたしは 真面目に やっている つもりだったけれど

「わざと おそくやって お金を 稼ごうと して いるんだろう」と 何度も 
言われた

(── それが どうした?)  
(── それが どうした?) 

わたしは アルコールデイケアに 通っていて

まあ いろいろと あって 3か月 デイケアに 行けなかった

デイケアは 3か月 通所が 途絶えると
退所する ルールに なっている

メンバーは 看護師に 「あの人は 急に 来なくなったけど どうしたのですか?」と 尋ねたそうだけど 守秘義務が あるので 「そういう 質問には 答えられません」と 言われて わたしは 死んだことに なっている

(── それが どうした?)
(── それが どうした?)

まあ いろいろと あって

ようやく わたしが たどりついたのが 「作業所」 そこには わたしが 「仕事が遅い」と 皮肉を言う人は いなかった わずかだけれど 工賃も もらえた

(おおっ たどりついちゃったよ!)

「3,215」円などの 金額が とても 大きなものに おもえてしまうのが 不思議だった

(おおっ たどりついちゃったよ!)

作業所には いろいろな メンバーが いて 月曜日には グループホームから 
きている 女の娘が いる わがままで 朝から わあわあ 騒いで 手が 
つけられないのだけれど お昼ごはんのメニューを 決めるとき メンバーが 
食べたいものを 言い合い 多数決で 決めることに なっている 

その娘は 毎回 キーマカレーが
食べたいのだけれど わたしが 知る限り キーマカレーに 決まったことは なく 
その娘は 黙って 結果を 聞いている

彼女は そこで 民主主義を 学んでいるようだ

友人は 1人で 良い

友人は 「社会は 会社より 広い」と わたしに 言った

いま 疫病が 蔓延していて 解雇される人や 閉店せざる得えない商店や 家賃を
払えなくて 行き場を 失っている人たちが 多いと 聞いている

作業所のメンバーは わたしのように 精神障害者年金や 生活保護で 生活している人が ほとんどだけれど 毎月 支給が途絶えることは なく 赤字さえ出さなければ 生活していくことに 支障はない

旅行などには 行けないけれども・・・

わたしは 大病をしても 延命治療なんて ごめんだ な

日本は 何かと 非難の対象に なっているけれども そして その気もちも わかるのだけれども・・・ まだまだ そんなに 見捨てたものでは ないんじゃ ないか?

還暦までに もう1回くらい 恋愛を してみたい なんて おもって いるなんて 
書いたけれど 1生 恋愛なんて できない人も いるのかも しれないな・・・

(恋愛できないとして それが どうした?)

性器は 持っているけれども その人の それは もしかしたら 排泄器官でしかない みたいなのだ

けれど 排泄器官は 性器より 広い!

還暦までには やっぱり 恋愛してみたいな! 

最近 いい人 見つけちゃったんだけれど
35歳差じゃ 眼中に 無いだろう ね!

(── それが どうした?)
(── それが どうした?)

アルバイトなんてのも  やって みたいものだ!

 

 

 

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