原田淳子
島の身体
干あがって、湿って、混じり在る
岬の手
陽を浴び、他者の恵みの葉
太陽は輪郭を解放し
雨は輪郭を際立たせる
天から溢れる羽根で服を編み
ふたつの羽根を持つ鳥の真似して
島から飛び降りた
堕ちるあいだ
雨は光へ還り
百年ぶりに夢をみた
あなたの眼がひらいた瞬間
島が燃えた
ねえ、エトランゼ
あの、すばらしい雲
あなたの心臓のようだったわ
“一番好きなものは何?
教えて、謎めいた人よ
父親、母親、妹、それとも弟?
わたしには父も母も、妹も弟もいない
じゃあ友達?
そんな言葉は、
今に至るまで意味を知らぬ言葉
祖国?
そんなものがどこにあるかも知らぬ
美?
女神や不死神なら、好きになっても良いね
金?
きみが神を嫌いなように、わたしは金が大嫌いさ
いったい何が好きなの?途方もない異国の人よ
わたしが好きなのは雲、
あそこに浮かんでるあの雲、
あのすばらしい雲”
ボードレール「異邦人」
Charles Baudelaire « L’Étranger »